▼ 衝撃の猫カフェ編
「政宗さんとオーナーはこちらでお待ちです」
ある日来店すれば、店長さんに案内されたのはまさかのVIPルーム。
扉を開けて中に入った瞬間、あまりの事に固まってしまった。
「おぉっ!やっと来たな!」
「待ちくたびれたぞ」
中にいたのはいつものふたりだけど、その様相は完全におかしい。
政宗は真っ白なふわふわの着ぐるみを着て、頭には真っ白な猫耳をつけている。同じく弓月も同じ格好をしていたが、色は真っ黒だった。
しかも、VIPルームも違う。アイボリーの柔らかいラグが一面に敷かれ、いつものあのアンティークのソファも撤去されている。
そして、代わりに小さめなローテーブルと猫じゃらしやキャットタワーなど猫のおもちゃが置いてあり、ふたりはそこで寝転がりながら顔だけ起こして私に話しかけてきたのだ。
これはどう見ても…
「猫カフェ!?」
「さすがだな君!今日は最近仕事でめちゃくちゃ忙しそうだった君に俺と弓月で君のために猫カフェをやるんだにゃん」
「この間、お前は猫カフェで癒されたからまた行きたいと言っていただろう?だから、俺達がお前の猫になってやるぞご主人様」
立ち上がって近づいてくる政宗と弓月。
大の男が猫耳を付けて顔の横で丸めた手で猫の手の動きをまねている。にゃんにゃんとぶりっ子をしているつもりだろうけれど、はっきり言って気持ち悪い。
「大きなプロジェクトがひと段落した祝いに旅行をプレゼントしてやってもよかったが普通じゃつまらないだろう?俺達が驚きと癒しをプレゼントしてやるにゃん」
「いやいや!そんなお祝いとかいいから!」
「何を言う。俺と政宗はお前の男だろう?愛しい女のために好きなものになったんだから遠慮はいらん」
「あのね、何回も言うけど、ただのホストとお客だから」
ふたりの言葉にもちろん嫌な予感しかしない私は辞退して帰るために後ずさりをしようとしたけど、既に囲まれてしまいそれも叶わなかった。
「お前、こういう可愛くてもふもふしたものが好きなんだろう?愛でていいぞ?」
体長約1.8mで猫耳を付けて着ぐるみを着た男にそんな事を言われても、可愛くないというかむしろ恐怖さえ感じる。
「だめだろ、弓月!ちゃんと語尾ににゃんって付けろにゃん!」
「おぉ、そうだったなぁ…にゃん」
「確かにふわふわで丸くて可愛いものは好きだけど…」
「それならなおさら触れ。特注で作らせた着ぐるみだから、毛並みは抜群だぞ…にゃん」
いきなり腕を掴んで、自分の胸元当たりを撫でさせてくるオーナー様。
「ほんとだ!すごい!」
拒否しようと思ってたのに、その触り心地の良さに思わず自分から手を撫で付けてしまう。
嬉しそうに微笑む弓月をよそにその胸元辺りをなでなでする手は止まらない。
さすがセレブ!こんなおふざけのための着ぐるみの材質も最高級のものを用意するのか…!
なんて感心していると、背後からいきなり抱きついてくる政宗。
「弓月ばっかりずるいにゃん!」
構ってと言わんばかりに首元に頭を擦り付けてくるその仕草はまるで本物の猫の様だった。
結局、観念した私がテーブルに半ば無理やりつかされたところで、ボーイの人が運んできたのはお酒とおつまみじゃなくて紅茶とケーキ。
本当に今日はカフェ仕様らしい。しかも、ケーキは雑誌で話題になっていた高級ホテルのものだ。
「おいしい!」
「よかったなぁ…にゃん」
食べながらほっこりしていると弓月はクッションに座っている私の太股にゴロニャンと頭を乗せて甘えてきて、政宗は私の右側にぴったりとくっついていた。
ケーキを食べたところで、政宗に肩をつんつんとつつかれる。どうしたの?と振り返れば、いきなり唇をペロリと舐められた。
「!?」
「クリームついてるにゃん」
ニヤリと悪い笑みを見せた白猫はそのまま唇を舐め続ける。
しばらくペロペロと舐められたかと思えば、いきなり唇を重ねられた。
「んんっ!?」
「たのしそうだな。俺も混ぜてくれ…にゃん」
これはまずいと思う間もなく、相方の不穏な動きに反応した弓月までもが身体を起こして背後から抱きついてくる。
弓月に動きを封じられて、政宗はそれをいいことにますます深いキスをしてくる。
口づけに溺れてしまわないように理性を必死でつなぎとめていると、その隙をつくかのように背後から回った弓月がジャケットのボタンに指をかけられて脱がされ、ブラウスも脱がされてしまう。
解放されてするりと外気が背中を撫でる。
「ちょっと!?弓月!」
政宗から解放されたので、クレームを付けようと大きな声で呼ぶ。
「ご主人様、気持ちよくしてやろう…にゃん」
けれども、それを意に介さない黒猫は耳許で囁いたと思うと、首の付け根から背筋をつぅっと舌でなぞった。
「あぁっ…!」
ぞくぞくと快感がせり上がり、身体がぴくりと跳ね、思わず、声が出てしまった。
その瞬間、背後は見えないはずなのに、なぜか奴が笑みを深めた気配だけは感じ取れた。
しかも、私の反応に気をよくして、もっとと言わんばかりに首筋に舌を這わせ、おまけに胸元にも手を伸ばしてくる。
ブラジャーから勝手に解放した胸をやわやわと揉んできた。
「ダメだって!こらっ!」
「やはり気持ちいいなぁ」
やっとの事で政宗から解放されてセクハラ野郎に注意をしても、話を聞いてなければ、猫設定すらも忘れている。
「こっちも脱ぐにゃん」
弓月から逃れようとバタバタしてたところで、嬉しそうに笑った白猫がスーツのパンツもストッキングも脱がせ始める。
そして、剥き出しになった素足にその薄い唇を寄せた。
「ひゃっ!?」
足の親指にキスをされると思わず身体が跳ねてしまう。
「いい反応にゃん」
本当に猫の様に三日月形に目を細めて舌で指を嬲り、吸い付いてくる。
ペロペロと指の間を舐められて足の裏まで舐められてしまえば、ぞくぞくと反応してしまう。
「ちょっ…政宗…汚いからダメだって!」
それでも一向にやめる気配はないのはこの男の相変わらずの意地悪さ。
「お前に汚いところなんてないから大丈夫だ…にゃん」
おまけに弓月が今度は耳たぶを唇で優しく啄み舌先で弄ぶ。
政宗はちゅぱちゅぱと淫猥な音を立てながら、飴を舐めるみたいに舌で指を転がし、時折甘く歯を立てる。その度に腰の奥がきゅんと疼いて、内側から潤っていくのが嫌でもわかる。
「もっ…政宗…」
知らなかった悦びを教えられて変になりそうな怖さで、これ以上は止めて欲しいと名前を呼ぶけれど奴の色素の薄いの瞳が甘い輝きを帯びているだけで。
しかも、今度はすねから太股へと舌でなぞりながら身体を寄せてくる。そうして、とうとう中心にまで辿りついてしまった。
「ここもトロトロにゃん。いつもよりも濡れてるにゃん」
ショーツを取り払われて、大きく股を開かされてしまう。
「あっ!ダメだって!」
「いただくにゃん!」
口角を上げて、花びらの淵を舌でなぞった政宗は、そのまま粘膜に舌を埋め込む。
執拗に敏感な場所を擦られてしまえば、舌を締め付けてしまう。
顔を埋められて、頭の上の猫耳が嬉しそうに揺れているのが恨めしい。
「あぁっ…ん…はぁ…」
ぴちゃぴちゃと音を立てて猫がミルクを飲むみたいに速い動きで何度も執拗に敏感な場所を擦られる。
おまけに、すぐ上にある敏感な蕾に鼻が当たり、それも強烈な快感のアクセントになっていた。
「はぁ…あぁっ…政宗…おかしくなっちゃうよぉ」
「ほら、もっと気持ちよくなってしまえにゃん」
私の訴えに答えたのはなぜか弓月で、しかも胸の先端をくにくにと摘まんだりしながら、両肩や背中に何度もキスをしてくる。
身体全体がぞわぞわとした快感に覆われて、腰が浮いてその中がきゅうっと切なく震えてしまう。
「あぁっ…!」
そのまま登り詰めてしまい、入り込んでいた舌を締め付けてしまった。
そうして達した私は不意に解放され、ラグに四肢を投げ出して天井のシャンデリアをぼんやりと見上げていた。
「ご主人様、癒されたにゃん?」
そんな中、私の蜜で唇を濡らした政宗が嬉しそうに覗き込んでくる。
全身をこのニセモノのエロ猫たちに隈なく舐められてしまい、蕩けてしまった身体は力が入らなかった。
「もう無理…」
「まだまだこれからだろうにゃん」
弓月もわくわくキラキラした瞳で私を見つめてくる。
「「もっと遊ぶにゃん!」」
今度は自分たちの着ぐるみを脱ぎ出したふたり。
怒涛の展開に疲れ切っていた私は「あぁ、猫耳はそのままなのね…」なんてもはや的外れな事を考え始めてしまった。
その後、このエロ猫二匹にいい様にされてしまったのは言うまでもない。
2017.5.4
天野屋 遥か
天野屋 遥か
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