love that I need(後編)1
「やっ…ダメだって…」
制止するために脱がせようと服にかけられた手を止める。
「いいから黙ってろ」
けれども、舌打ちをしたおあいて2にいきなり唇を塞がれてしまった。
大好きな恋人の舌が入り込んできたはずなのに、恥ずかしさで逃げたくなる。けれども、深くまで入り込みそれを許さなかった。
いつもよりも情熱的で激しい。
おあいて2はぶっきらぼうに見えるけれど普段は優しくて丁寧に愛してくれる。なのに、今日は違う。呼吸を奪われ、甘い刺激と重なり頭が朦朧として理性が溶けていってしまった。
やっと解放された所で、こうして力が抜けてしまった私は恋人の手で肌を友人に晒されていく。
残った力で嫌々と抗うけれど、お構いなしに着ていたトップスが宙を舞いジーパンが床に滑り落ちてあっという間に下着姿にされてしまい、そのまま彼の胸にもたれ掛かる。
「おあいて、お前はこれでも我慢すると言うのか?」
そんな私を親友に見せつけながらおあいて2は挑発した。
その言葉が引き金になり、呆然としていた彼の瞳が光を取り戻す。
けれども、それは妙にぎらついた暗さを帯びていた。
そして、無言のまま伸びてきた腕に、奪い取る様に抱き寄せられる。両手で顔を持ち上げられるとその日本人離れした甘い顔立ちが間近に迫っていた。
「なまえちゃん…」
いつも穏やかに私に微笑みかけてくれたおあいてからは考えられない位に情熱的な眼差し。
物欲しそうに近づいてくるその行動の意図が分からないほど子供ではない。
「おあいて…んんっーー!?」
続くはずの言葉は遮られ、彼の奥へと飲み込まれていった。重なった唇から舌が滑り込んでくる。絡ませられて歯列をなぞられ、全てを確かめるような深いキスをされた。
いくらお酒が入っているからといえ、そして恋人が挑発したからといってこんな事は許されるはずもない。胸元に手を当てて懸命に押し返そうとするけれど、逆に身体を押し付けられて口づけは深くなってしまった。
「もう、ここまでにしよ?私、おあいて2と付き合ってるんだよ…?」
解放されて、何とか友人を正気に戻そうと訴えかける。
もはや、私自身もふたりからの濃厚なキスで惚けており、このままだと取り返しのつかない事になる不安に駆られていた。
「その俺がいいって言ってるんだ、なまえ」
けれども、不意におあいて2が私に引導を渡す。
「なまえちゃんの大事な彼氏もこうやって言ってるんだし、僕も男だから添え膳は美味しくいただきたいな」
目の前にいるのはまるで知らない男性だった。
妖しい笑みを浮かべ首筋から胸元へとキスを落とし、胸の先端に吸い付いてきた。片方を舌で転がされ、もう一方を指先で遊ばれれば、甘い痺れが広がり腰の奥がきゅんと切なくなる。
「っ…」
唇を噛み締めて声を漏らさないようにする。
どうしておあいてはこんな事をさせ始めたのだろう?
私の事がどうでもいいの?
口下手だし、不器用だけど本当に私が嫌がる事はしてこなかったのに…
気持ちが通じ合っていると信じていた恋人への不信感が芽生え、その悲しさとおあいてへの気持ちに対してどうするべきなのか分からなくて整理がつかない。
その間に流れる様に押し倒されて、大きく股を開けられてしまう。下着越しに秘裂をなぞられれば、すでに染みが出来ていた。
「あっ…」
「よかった。僕でこんなに感じてくれたんだ」
声に嬉しさを滲ませて、まるで果実の皮を剥くかのようにショーツを脱がせたおあいては瑞々しく開いた花びらに唇を寄せた。
「はぁ…ダメ…っ…」
蕾に吸い付かれ、粘膜に舌を埋め込まれる。先程のキスのような優しい口づけを何度もされれば自然と声が上がってしまう。刺激に耐えかねて頭を起こしておあいてを見つめれば、嬉しそうに目を細めていた。丹念に舐められて、内側から溶けてしまいそうになる。
入り口の裏の浅い部分を何度も舌先で舐られて、中も粘膜をぬるぬると撫でつけられれば、その刺激に腰が浮いて痙攣が始まる。
「はぁっ…あぁっ…!」
とうとう達してしまった私は、収まったままのおあいての舌を締め付けてしまった。
彼が顔を離したところで、ベッドにだらりと手足を投げ出す。
恋人の目の前で、抗いも空しく他の男に導かれて頂まで到達してしまった事実に呆然として何も考えられなかった。
生理的な涙で朧げな視界で、おあいては自身の服を脱ぎ捨てている。
身体も言うことをきかない私はそれを傍観する事しか出来ない。
「ちゃんと僕を受け入れてくれる準備は出来てるよね?」
すると、入り口に固く熱を持った塊が押し付けられた。
「ダメ…それだけは…」
なけなしの理性でそんな事を口走るけれど、実際は身体の芯が蕩けてしまい雄を求めて疼いているのも自覚している。
「ごめん。君が何を言ってももう止められないから…」
そんな宣言をして、避妊具を付けたおあいてが正面から入ってくる。大きな身体に見合ったそれは、おあいて2とは違う存在感を放っていた。
そのまま、腰を動かし始める彼に腰のナカは嬉しそうに絡み付き、更に奥へと誘い込む。
パン…パン…と水気を含んだ肌のぶつかる音と私達の吐息が部屋に響いている。
その事実から逃げる様に私はただの友人ではなくなってしまったこの人から顔を背けていた。
「こんな日が来るなんて思わなかった…」
その声はあまりに切実で。
驚いて顔を上げれば、すでに奥まで入り込んでいるおあいてが再び涙を見せていた。
そう、思い返せばいつも私を助けてくれた。
講義のノートを貸してくれたりとかの些細な事から、おあいて2とケンカしてしまった時に話を聞いてくれてアドバイスをくれたりとおあいて2とは違う立場だけれども、同じくらいに大切な人で。
それなのに、ふがいない私は何も返せてなくて。
そんなおあいてからこんな風に強く想われてる気持ちを無下にすることなんて出来ない。
「泣かないで…おあいて…」
涙を拭おうとそっと頬に手を伸ばす。
すると、いつの間にか動きを止めていた彼はその手に自分の手を重ねて、縋る様にぎゅっと握ってきた。
「ゴメンね。カッコ悪い所見せちゃって…でも本当に嬉しくて…」
「いいよ。全部見せて…私の前では我慢する必要なんてないよ」
そう、気づいていた。
人一倍、見た目や立ち振る舞いを気にするこの友人は、本当はどこかでカッコ悪い自分も認めて欲しいって思っている事を。
なのに、それを上手く見せられなくて、今日みたいにお酒を飲む事にも気づいていた。
「何も知らなくてゴメンね…」
いつも助けてもらってるから、恋人と別れた時に励ます位はしたいと思って集まっていたけれど、それすらも彼を苦しめていたんだろう。今更ながら、私は大切な友人に残酷な事をしてしまったのだと思い知らされる。
「…君は本当にズルいよ」
涙を溢しながら笑うおあいてはあまりに綺麗で思わず息を飲んでしまう。
「そうやって僕の心を見透かして捕らえた癖に、いつもすぐ隣でおあいて2と笑ってたんだから」
覆いかぶさり、甘える様に首筋に顔を埋める彼の背中に腕を回す。
厚い胸板はしっとりと汗ばんでいて熱く、普段目にしている恋人の褐色とは違う真っ白な肌が赤く上気していくのが艶めかしかった。
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