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▼ 01

夢を見た

懐かしい夢をーーーーー

「みかげちゃん」

「まことくん」

ある晴れた日に二人で公園のブランコに乗っていた。             
かわいい男の子が私の名前を呼んで、私も嬉しそうに答える。

そう、遠い昔、私には大切な幼馴染みがいた。

近所に住んでいた同い年の男の子で、いつも一緒に遊んでいた。
けれども、唯一の肉親であるお母さんがなくなると、何処かに引き取られていった。
それっきりで、いなくなってしまいとても落ち込んだのを覚えている。

どうしてそんな夢を見たのだろう?
その時の私にはわからなかった。



「みかげちゃん…?」

友達の結婚式のために来た高級ホテル。
化粧室から会場へ戻ろうと歩いていると、不意に呼び止められる。

「…どなたですか?」

振り返れば、高級なグレーのスーツを着た知らない男性が立っていた。
派手な金髪とピアスで、ホストみたいな風貌の綺麗な顔立ちをした彼が、嬉しそうに目を細めて私を見ていた。
けれども、思い当たる節はなくて、人違いかはたまた怪しげな勧誘か何かではないかと警戒する。

「覚えてない?昔、よく一緒に遊んでた寺岡 真琴って…」

しかし、次の瞬間告げられたその名前に驚く。
にこにこと周りが明るくなるような笑顔は確かに記憶の中の真琴君に重なる。

「覚えてる!ほんとうに真琴君なの!?」

さっきまでとは一変し、思わぬ再会に驚きと喜びが一気に押し寄せて思わず大きな声で返事をしてしまった。

「その格好は…何かのパーティー?」

「うん。友達の結婚式に呼ばれてて。真琴君は?」

「俺は経営してる会社のミーティングで此処に来たんだ」

「えっ!?社長さんなの!?」

「うん、小さいけどベンチャー企業の社長なんだ。これでも一応」

照れ臭そうに眉を下げるかつての幼馴染み。
ホストみたいだと思ってたけど、そーゆー事なのかと合点がいく。

「まさかこんな所で会えるなんて思わなかった」

そうやって、彼としみじみと再会を喜んでいると携帯が鳴った。

『ちょっとみかげ!?何してんのよ!もうすぐ式始まるわよ!!』

「ほんと!?すぐに戻るから!」

友達からの怒りの電話に慌てる。

「ごめん!もう行かなきゃ!」

「待って!連絡先だけ教えて!」

真琴君の申し出に慌てて連絡先の交換だけをして、そのまま式場へと向かった。


その後、連絡が来て、一緒に食事へ行くことになった。


「本当にここで食事していいの?」

予約をしてくれていたレストランは一等地にある、ひっそりとした佇まいの高級店。

「何言ってるの!大丈夫!俺の行きつけだから」

驚いて固まっている私の手を取って、エスコートしてくれる。支配人と慣れた口調で話をして、席へと案内される。
しかも、通されたのは個室だった。
こんな場所に来たのは初めてで、緊張は高まるばかり。

「じゃあ、改めて二人の再会に乾杯!」

「…乾杯」

そんな状態のまま、グラスを鳴らしワインを口にする。

「…おいしい」

ところが、その美味しさに、緊張していた自分の心がほどけていく。上品で甘いそれは、普段あまり飲まない私でも高価なものだとわかった。

「でしょ?みかげちゃんが気に入ると思って、キープしておいたんだ」

真琴君が薄く形の整った唇から真っ白な歯を覗かせる。
そして、そんな会話をしていると、コースの料理が運ばれてきた。
こちらも、見るからに上品で美味しそうな料理で、お金持ちは違うなぁと感心してしまう。

「あれからさ、元気にしてた?真琴君、突然引っ越しちゃったから、私ほんとに悲しくて泣いてたんだよ」

食事が始まった所で、思い出話を始める。
もう、20年以上も前の事だっだけれど、あの当時、本当に寂しくて毎日泣いていた事は今でも鮮明に覚えていた。

「…あの時は母さんが亡くなって、それまで別々で暮らしてた父さんに引き取られたんだ」

「そっか…お父さんの所に…」

住所とかを知っていれば手紙を書いたり出来たのにと今なら思うけれど、あの頃の小さな自分にはそんな事は出来なかったとも思う。

「そうなんだ。で、その後は…」
 
別れの後、それぞれどんな風に時を重ねて、今はどんな生活しているのかを語り合った。

彼も私と同じ様に大学まで進学して、学生時代に起業をしたらしい。
平凡なOLをしている私とは大違いだった。
取引先の繋がりで芸能人がくる様なパーティーに出る事もあるとか、華やかな世界に生きている彼の話に聞き入ってしまう。

今までのお互いの空白を埋めるように話をした食事はとても楽しい時間だった。


「みかげちゃん、今日はありがとう楽しかった」

「私も凄く久しぶりに会えて、色んな話を聞けて楽しかった。しかも奢って貰って…こちらこそありがとうございました」

駅での別れ際、奢ってくれた彼に深々と頭を下げてお礼をする。

「そんなにかしこまらないで?…それで、よかったらまた会いたいなって思うんだけど、いい?」

「もちろん!ぜひ!」

そう私が笑顔で答えれば、彼も笑窪を見せる。

そして、その日以降、真琴君から頻繁に連絡が来てお互いに連絡を取る間柄になった。

食事だけじゃなく、休日に出掛ける様にもなり急速に仲が深まっていく。

電話で私の仕事の話を親身になって聴いてくれたり、あの頃と変わらない素敵な笑顔で、優しくてエスコートも上手い彼に惹かれ始めていた。


2015.5.24
天野屋 遥か

 

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