迷子の迷子の小動物
「あの、バレーボール部の方ですか?」


「「!?」」


放課後になったばかりの烏野高校。着替えを済ませた田中と西谷はいつものように第2体育館に向かっていた。今日担任がよー…。だの、そういや清子さんが…、え、まじで!?だのいつものように話しながら移動していると、そこに烏野ではない制服を着た女子高生が話しかけてきた。背は西谷よりも少し低く、少し癖っ毛の黒髪を肩まで伸ばした可愛らしい感じの子だ。女好き?な二人にとっては大事件である。


「ノノノ、ノヤッさん!女子が!かわいい女子が話しかけてきてます!!」

「おおお、落ち着け龍!ここは男らしい余裕を見せてだな…」


見た感じ怖い印象を与える二人はあまり女慣れしておらず完全にパニック状態。作戦会議というようにこそこそ話しているその姿ははたから見るととても怪しい。


「あの…?」


急に小声で話し始めた西谷たちにとまどった彼女はもう一度声をかける。少し戸惑ったというか、怯えたというか、そんな表情の彼女にハッとした2人。ヤバイ!このままだと何も会話せずに別れることになる…!何か話さねば!という謎の義務感が西谷に芽生えた。


「あっはっは!そうだ、俺たちがバレーボール部ですけど何か?!」

「ノヤッさん!顔!顔怖えよ!」


いっぱいいっぱいの西谷の顔はメンチ切ってるようにしか見えない。たいていの女子はこの時点で逃げていくのだが、幸運にもこの女子は西谷の顔よりも、彼らがバレー部であるということに安堵し、笑顔を見せた。


「良かった。あの、練習見学してもいいですか?」


その彼女から言われた予想外の質問に、へ。とぽかんとした2人。落ちた強豪と言われてきた彼らの元へ女子が見学に来るなんて烏野高校内でもなかった。2人が固まったのを勘違いされていると思った彼女は、あ、別に偵察とかじゃないんです!と、手をぶんぶん振って慌てて弁解する。その様子はまるで小動物のようだ。


龍、わかってるよな?
もちろんだぜ、ノヤッさん!


テレパシーなるもので通じ合った2人は、バッ!と、未だに違うんですアピールをしている彼女の方に振り向いた。そして、ビクッと驚いた彼女にズカズカと近づく。


…やっぱり、偵察だと思われたのかな。追い返される!?女子高生に若干の不安がよぎった。しかし、


「こっちです、どうぞ!足元には気をつけて!」


田中と西谷はそういうと第2体育館へ歩きだした。追い返されなかったとほっとした彼女は、小走りで2人を追いかけていった。


「カバン持ちましょうか!?」

「あ、いや、大丈夫です……」


強面な二人と小柄な他校生の様子はその後しばらく烏野で噂になったとか。


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