1

「どどど、どないしよう。スヤ子さんが起きてもうた!俺ら呪われてまう!!」

「……いや、よう見てみぃ。スヤ子さんは人間や」

「………え?」


そう言って、こちらを見つめる2対の眼。片方はビクビクと、もう片方は面白そうに。

……ちょっとまって何この状況。春名葵戸惑ってます。



*****


「あらあら、今年もよう来よったなぁ」


おじいちゃんも喜んどるわ。と穏やかな笑顔で私と母を迎えてくれたのは母の母、つまり私から見ておばあちゃんにあたる人だ。

私と母はお盆の時期の今、おじいちゃんの七回忌ということもあり、母の実家のある大阪に来ている。

私にとっては久しぶりの大阪だ。今年、テニススクールに通い始めた兄は試合が近いため父と神奈川に残っている。

兄さんがテニススクールに通い始めたときは驚いたなぁ。ブンちゃんがまだ目覚めてないから油断してたらお前かいって心で叫んだわ。

まあとにかく、母子2人ではるばるやって来たわけだけど。なんやかんや午前中に法事を済ませ(葵ちゃんはお行儀よくて偉いわねと親戚に褒められた。伊達に精神年齢年食ってないわ!)、午後になると大人たちはわいわい酒を飲み始め盛り上がっている。

………この部屋から出たい。子供は私しかいないし、どっかで本読みたいんだけどな。

そうと決まれば移動だ!と、やたら絡んでくるおじさん、おばさんたちをかいくぐり、私がたどり着いたのはおばあちゃんが営む駄菓子屋スペース。

あ、今更だけど母の実家は駄菓子屋さんだ。結構地元の子供に愛されてるらしい。子供が好きで穏やかなおばあちゃんにとってはまさに天職だと思う。

今日は流石に閉めてるだろうし、少しだけならここにいてもいいかな。
お金を払うところにちょうど良い座椅子があったのでそこに座り静かに本を読みはじめる。

結構な間そうしているとだんだんうとうとしてきて、私はいつの間にか眠りについていた。



*****



そして物音で起きたらこの状況である。ってわかるか!


「あの……誰?」


私が話しかけると黒髪の方がビクッとして、喋りよった!?と怯えている。失礼な。


「すまんなぁ。せやから言うたやろ謙也、噂のスヤ子さんは人間やって」

「せやかて侑士!きよばぁおらへんのにスヤ子がおるっておかしいやろ?!」


若干青みがかった髪色の子は比較的落ち着いていて、まだわいわい言ってる黒髪くんをたしなめてる。きよばぁっていうのはまあ、おばあちゃん(本名:木下清子)のことだろう。

そんで、1番気になっていることがある。


「………スヤ子さんて、何?」
/
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -