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サニー号のみんなが新しい島に上陸したらしい。
らしい、というのは「***を危ない目に遭わせるわけにはいかないから」という理由でしばらく会えない旨を言い渡されたからで、実際にそれがどんな島なのかを見たわけではないからだ。
あちらの世界の人(じゃない生き物も含まれるけれど)のパワーは尋常ではないことはルフィやゾロを見て重々理解しているので、「無茶をしすぎないようにね」という絶対聞き入れてもらえないお願いをしてお見送りをした。

それから二週間近くが経った。
私は私で仕事が繁忙期に差し掛かり、みんなが島に上陸していなかったとしても碌に会えなかっただろうなあ、と事実半分言い訳半分なことを考えながらディスプレイを睨んでいる。
次から次へと来る「依頼:○日〆」というメールと手元の膨大な資料を見ているうちに、社会が回っていくためには私という人間の感情は必要ないという事に気付いてしまった。
パソコンにコーヒーを溢さないよう気を付けるより涙を溢さないよう気を付けるほうが難しい。今日はここまでにしよう。

やさぐれた思考回路と鈍く痛む心臓を抱えながらアパートの階段を昇ると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
お隣の大学生が飲み会でもしてるのかな?いや、昨日トランクを転がして旅行に行ったみたいだったな。
どうやら声は私の部屋からしているようだ。しかもよく聞き覚えがある声。
私は慌てて鍵を開けた。

「おせーぞ***!夜遊びか!」
「***どうした、迷子になってたか」
「今度8000人の部下に***の手伝いさせてやるよ」
「お帰り***、遅くまで頑張ったわね」
「***風邪引いてないか?薬あるぞ!」
「ふふ、***お疲れ様。無理しないでね」
「***頑張り過ぎだ…スーパー泣けるぜ!」
「***さん、外は身にしみる寒さだったでしょう!私は骨身にしみる!」

目の前で繰り広げられる久しぶりの光景。
私の名前を呼んでくれている、私のことを気にかけてくれている。
「もー、泣かないの」
「どうした!?腹減りすぎたか!?」
慌てて涙を拭っているところで、一番聞きたかった声が降ってきた。
「お帰り***ちゃん、お疲れ様。本当はおれが誰よりも先に会いに来たかったんだけど、こいつらも***ちゃんを心配してたからさ」

何も変わっていない優しい笑顔。
やっと出番が来た言葉をサンジに先に耳打ちしたあと、みんなに言った。
「お帰りなさい」


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bkm
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