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サンフラワーへようこそ同じアパートに住む大学生たちのお話
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EP.3 ユーキとユーヤの梅雨季節(2/3)
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ユーヤとシクロの話 | 生まれて間もないのに、近所のゴミ捨て場に捨てられていたシクロ。 そこへたまたまゴミ捨ての手伝いで訪れたユーヤが、拾って持ち帰ったのが一人と一匹の出会い。
「当時はめっちゃ大変だったよ。親にブチ怒られたし。でも、ちゃんと面倒見るからって約束して、そこから猫に関して必死に勉強したんだ。」
弱っていたシクロは動物病院に入院することとなったが数日後。退院が出来たその日のうちに元気な姿を見せてくれた。 病院から実家に連れ帰ったその日に『シクロ』と名付け、鈴付きの赤い首輪を付ける。
『今日からよろしくな、シクロ♪』
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ユーヤとシクロの話 2 | ミルクからの餌やり。 トイレや爪とぎなどの躾。 シクロと二人三脚で乗り越えていく。 拾った時、あんなに叱ったユーヤの親も、いつの間にか家族の一員として迎えてくれていた。 そして長い時間を経て、子猫から成猫以上へ成したシクロ。 勿論その後も大変なことが待っていた。 けど、
『シクロ。ずっとずーーっと一緒にいような。』
シクロと一緒だったから平気だった。 シクロと一緒だったから大変じゃなかった。 何よりもシクロのことが大好きだったから。
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ユーヤとシクロの話 3 | 拾ったあの日から、ずっと一緒にいたから、ずっと一緒にいたかった。 ずっとずっとシクロと一緒に・・・。 本当に大好きだった。 ずーっと一緒にいたかった。 ずっとずっと一緒にいてあげたかった。
「・・・どうしてずっと過去形?」
「シクロは猫としての一生を遂げることが出来たからだよ。」
あの頃のような温もりを感じられなくなっても。
『ありがとうシクロ。こんなオレとずっと一緒にいてくれて本当にありがとう。』
年をおって衰弱していって、形が変わってしまう最後の最期まで・・・。 ずーーーっと一緒にいたかったんだ。
『・・・さようなら。』
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ユーヤの宝物 | そしてこのボロボロの鈴はシクロの首輪に付けていたあの鈴。 だからこれはユーヤにとって、とってもとっても大事な宝物。
「ダメ、です。貰えないです。こんな大事な物・・・ッ。」
ユーヤとシクロの話を聞いたユーキ。 始め微妙だったその印象はガラリと変わったけれど、それは自分が持つべき物ではない。
「いいんだよ、ユーキ。」
それでもユーヤは『ユーキならいいよ』と、続けて言葉にした。
「俺が使うとシクロとの思い出を哀しく思い出しちゃって、どうしても使うことが出来なくて、今までもずっと机の引き出しにしまってた。でも、それじゃダメだって思ってもいたから。」
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ユーヤからユーキへ | 思い出が物として遺ったボロボロな鈴。 ユーヤはシクロとの大切な宝物をユーキに託す。
「一方的な俺のお願いになっちゃうけど、自由に使っていいよ。ユーキなら大事に使ってくれるって信じられるから。」
それは物である限り使わなければ、本来の役目も終えさせてしまう。 そうなってしまう前に・・・。
「ありがとう、話を聞いてくれて。・・・本当にありがとう。」
「ユーヤ・・・。」
そうなってしまわないように。
「・・・きっとユーヤのシクロもユーヤのこと大好きだったと思いますよ。」
「だったらいいな。」
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ユーキからユーヤへ | シクロとも思い出を全て『だった』で話し終えれたユーヤ。 フラッシュバックで蘇った記憶に涙を拭ったけど、その最後はすっきりとしていた。
「分かりました。今はボクが大事に預かります。」
「うん。」
「けどいつかはお返ししますので、その後はユーヤが使って下さいね。」
「うん。」
「だってこれはユーヤの宝物なんですから。」
「・・・うん。」
そしてユーヤからユーキへ。 ユーキの部屋の鍵に、シクロが使っていた鈴が付けられて返されたのでした。
「もっとシクロとの話、聞いてもいいですか?出来るとこまででもいいので。」
「うん、いいよ。シクロはねー・・・。」
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