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サンフラワーへようこそ

同じアパートに住む大学生たちのお話
完結][大学生][季節柄][コメディ]



EP.8 一夜の度胸試し(2/4)
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食休み

「にしてもユーキが来てから、すっかりお兄ちゃんになったねユーヤ。」

食事を終えた後は、少しばかり食休み。

「しっかり頼られてるみたいだし、仲良い二人見てて改めて安心したよ。ユーヤもいい子だったんだね。」

「え。」

ユーヤはそのままヒナの部屋でゴロゴロして暇を弄び。
ヒナは使用した食器類を、キッチンの水場で洗っていた。

「・・・オレ。ユーキが来るまで悪い子に見えてたってこと?」

「初対面だったころ。人に千年殺し仕掛けてきたこと、もう忘れたの?」

「そ、それは、ほら。照れを隠したオレ流の挨拶回りだったんだから忘れてよ〜。」

「忘れないよ。すっごく痛かったんだから。」



食休み 2

「今だから言うけど。ユーキにまでやっちゃうんじゃないかハラハラしてたんだからね。」

片付けも終わって、まだまだ食休み中の二人。
再びテーブルに戻ってきたヒナが二つのコップに冷たい麦茶を注ぎ、そのうちの一つにユーヤの手が伸びる。

「ユーキはオレにとって運命の人だから。そんなこと微塵も思わなかったよ。」

「その言葉で、あまりユーキを困らせちゃダメだからね。」

「もー、うるさいなぁ。褒めてたのなら褒めるだけにしてよ。」

「うるさいじゃないの。思い出したから注意してるんでしょうが。」

そしてコクコクコクと。コップ一杯をキレイに飲み干した。

「妬いてるなら、素直に妬いていいんだよ。ヒナ。」

「それ、どんな解釈?ユーキを変に振り回してないか心配してるだけでしょうに。」

「オレのことは?心配なのはユーキだけ?」

「さっきも言ったでしょ。仲良い二人見てて改めて安心したって。ユーヤがいい子でよかった。」

「・・・そっか。」



ユーヤのお誘い

そして、ふと。あることを思い出したユーヤ。

「そうだ。友達から一升瓶で酒もらったんだけど、ヒナ一緒に飲まない?」

「飲まない。」

「即答で拒否!?」

「・・・人がそこまで飲めないの知ってて誘う?レイがいるとき一緒に飲みなよ。ユーヤだって、そこまで強くないんだから。」

「だって今、ヒナしかいないじゃん。」

ゴロゴロしてた体を、ひょいっと起こしてヒナを誘い出す。
昼間からお酒とか、ちょいっと羨ましい奴らだ。

「それでさ。たまにはオレの部屋で飲まない?」

「もっと嫌。」

「また即答で拒否!?」

「だってユーヤの部屋、散らかってるとき多いし。」

「そ、そんなことないよ・・・。ちゃぁんと片付けてるしぃ。」

「ユーヤ。目、泳ぎすぎ。」



ユーヤのお誘い 2

「そもそも昼からお酒というのもな・・・。まだ課題やってた途中だし。」

そんな羨ましいのを渋るヒナ。
なかなか首を縦に振らせない。

「・・・分かった。じゃあオレ、一人で飲む。」

首を横に振ってもいなかったから、ちょっとは期待してたのに。
諦めかけた、その時・・・。

「夜でもいいなら、いいよ。」

「え。」

「夜までには部屋の片づけ、終わらせててね。それまでには僕も今日の分の課題、終わらせちゃうから。」

「・・・うん。うんっ、分かった!」

なんという時間差な反応。
ヒナはようやく首を縦に頷かせたのでした。



ユーヤに部屋に揃う二人

雨も風も強くなってきた夜。
時折、雷もゴロゴロ鳴り、外は荒れに荒れている。
そんな中、ユーヤの部屋にて。
ヒナのちょっとした料理をおつまみにして、水で割った焼酎を飲んでいた二人。

「あひゃひゃひゃひゃ。」

「・・・・・・っ。」

二人揃って、あまりお酒が強くないから、あっという間に出来上がり。

「あひゃひゃ。ヒナ大丈夫?あひゃひゃ。」

「これ、アルコール・・・っ・・・強くない?」

「たまには強いのもいいでしょ?ヒナ、いっつもほろ酔ってばっかりだし。」

「ダメ・・・、だよ。こんなに強いの・・・これ以上飲んだら。」

「せっかくのいいお酒なんだから、もう少しだけ。もう少しだけいってみようよ。」

ユーヤもヒナも酔っ払い状態。
でも、それぞれ酔い方が異なっていた。



酔っ払い二名

ユーヤよりもお酒に弱いヒナ。
コップ一杯で限界だったのか。空けると共に体の力が抜けてしまい、ユーヤに支えられる。

「ユー・・・ヤ?」

「ヒナ、とりあえずコップ、手から離そうか。落として割れたりしたら危ないから。」

目も据わっており、完全に焦点が合っていない。
すぐ後ろにいる男の子の声が、遠くで響いて聞こえる。

「ヒナ眠いの?後はオレに任せちゃっていいから。片づけもちゃんと全部やっておくから、寝ちゃって大丈夫だよ。」

「・・・ごめんね、ユーヤ。」

「おやすみ、ヒナ。」

そして身を預け、始まりから30分も経たないうちに夢へと堕ちてしまった。
ユーヤが飲んでたモノよりも、濃く作られていたことに気付くことなく・・・。



二人の夜

ゴロゴロと大きく鳴った雷が落ちた影響で、部屋の電気がすべて停まり一瞬にして真っ暗に。

「うっわ・・・。外、荒れててすごいね。」

敷いた布団の上に持ち上げた体を、そのまま仰向けで寝かす。

「なんか、背中押されてるみたい。」

そして自分もヒナの上に。
彼を自分の体で全てを覆う。

「あひゃひゃ。やっぱヒナっていい匂い。ただの制汗剤なのにヒナが付けてるからなのかな?この匂い、すごく好き。」

外がどんなに荒れて煩くても。
首元に顔を潜められていても反応なし。
お酒を飲んでリタイアしたヒナは、しっかりと眠ったまま。

「なんか寝苦しそうだね。・・・服、脱いじゃおっか。」

今のヒナなら、どんな危機が迫っていても、無抵抗で受け入れてしまうだろう。



一通の電話

ヒナの服にユーヤの手が触れた、その時。

「・・・!」

突然、鳴り出したヒナの携帯電話。
その音でハッと我に戻るユーヤ。

「もう〜。これからいいところなんだから邪魔しないでよ。」

酔っぱらった口調で独り言のように文句を零しながら、ヒナから一旦離れて、鳴り響く携帯電話を手に取る。
そして着信してきた相手を見て、持ち主の許可がおりてないのにも関わらず、その電話に勝手に出た。

『そっち台風、大丈夫か?』

「・・・・・・。」

『ヒナのことだから二人の面倒見てる頃だと思うけど、あんまり年上ぶって無理だけはするなよ。』

「ごめん、・・・レイ。ヒナ。今、電話に出られる状態じゃないの。」



受話器の向こうに

受話器から聞こえるレイの声。

『ん?その声、ユーヤか?晩飯時だから、また何か作ってる最中だったか。』

「・・・・・・。」

『ユーヤもユーキも、あんまりヒナを困らせる真似するなよ。まぁ、甘やかしてるのはヒナの方だから言っても無駄だろうけど。』

「・・・・・・。」

そしてお互いに顔が見えないことをいいことに。
お互いに声しか聞こえないことをいいことに。

「違うよレイ。ヒナ・・・、寝ちゃってるから出られないんだよ?」

『寝てる?こんな時間にか?』

「うん。こんな時間に。」

ユーヤからレイへ告げたのでした。

「・・・オレの部屋で。」



ユーヤからレイへ

『今のどういう意味だ?ユーヤ???』

「そのままの意味だよ。ユーキも帰省でいなくなっちゃったから、ヒナと二人でお酒飲んでたの。でもちょっと意地悪したら、あっという間にヒナ、リタイアしちゃって。」

受話器の向こうから聞こえる声色。

「オレ、知らなかったな。こんなにヒナがお酒に弱かっただなんて。」

『ユーヤ、お前・・・ッ!?』

「・・・どこ触っても起きないんだ。ちょっとだけピクッてなったりするけど、それだけ。全然起きる気配ないの。」

一つは焦りを見せ始めたが、もう一つは凄く冷静。

「ね?どうしよう?どうしたらいい?オレ、こんなの我慢できない・・・。」

ヒナに迫ってる危機。
ユーヤの狂った爆弾発言。

「レイと同じこと。・・・オレもヤっていい?」

それを電話の向こうで聞いたレイは、何を思ったのだろう。



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