するとその時、体に妙な違和感が。
「ん?」
けど直ぐにそれは違和感ではなくなり、明確に。 気づいた頃には、体に力がほとんど入らなくなっていた。
(え・・・、なに!?)
なんでいきなり!? 自分の身に、一体何が起きたの!? 体が動かない恐怖に襲われてるのに、頭もクラクラするような感覚もあって、訳が分からなくなってくる。
「く・・・っ!」
その時、
「!」
そんな俺に追い討ちを下すように。 ズカズカこっちにやって来た誰かが、この部屋の扉をバンッと蹴破ってご登場。
「へぇー、この子が錦 浬くんか。めっちゃ上玉じゃないっすか。」
「え?」
だがそれは1人だけではなく。 2人、3人、4人と後から続々と、神崎先生も一緒になってやって来る。
「本当にこの子、こましていいんですか?神崎さん。」
「ええ、構いませんよ。振り込んで頂いた前金も確認出来てますから、あとは皆さんでご自由に。」
マイクやビデオカメラなど、高そうな機材が色々と運び込まれていく。 中には雄叫び上げながら、服を脱ぎ始めている人までいた。 いきなりなに!? なんなんだ、いったい・・・っ! そんな突然の展開に、俺1人だけが置いてきぼりに。
「あ、でもその前に。浬くんに説明しないといけませんね。」
「孝さん・・・?」
「驚かせてしまってごめんなさい、浬くん。」
そこへ気づいた神崎先生が、いつもの笑顔でニッコリと。この状況を説明してくれた。
「前に私が離婚したお話、覚えてますか?覚えてますよね、ここ最近のお話ですから。」
「・・・え。」
「浬くんが忘れるはずないですよね。私が離婚した原因、浬くんにもあるわけですから。」
でもその笑顔は、よく見たら全然笑ってない。 優しくてニッコリしてるけど、全然笑ってないのだ。
「離婚って離婚届けを出して別れて、そこで終了じゃないんです。幸い私と妻の間に子供はいませんが、慰謝料は当然、存在してきます。私から一方的でしたから、たくさんの慰謝料を払うことで妻も納得・・・されたか分かりませんが、離婚を呑んで下さいました。」
「慰謝料?」
「けどー・・・私だけが、この額を負わなければいけないのは腑に落ちない。当然ですよね。浬くんのせいで私の人生、狂わされたのですから。だから浬くんにも、きちんと責任を取って頂かないと。」
彼は待っていたのだ、この日が来ることを。 しばらくあんなに優しくしてくれていたのも、全て俺を陥れる為だけ?
「それで私も浬くんの真似をさせて頂き。お試しで、とある裏の動画サイトに投稿したら、すごく反響良かったんです。」
「投稿って、なにを!?」
「浬くんも見てみますか?先日、私と致した時の映像。」
そう言って神崎先生は俺に近付いて、投稿したと言ったその動画サイトを、自分のスマホで見せつけてきた。 だがそこには信じがたい衝撃的ない映像が流れ、俺はすぐに目を逸らした。
「ほら浬くん、ちゃんと見てください。コメントの方も、ちゃんと。」
顔にもモザイクかかってて誰が誰かが分からないけれど、自習室で神崎先生と繋がった時のことが。 やり始めから終わりまで、あの部屋に隠されていたカメラに、動画として全てを撮られていたのだった。 閲覧者から投稿されてるコメントも全部、下品なことばかり。 しかも隠し撮りされていた動画は、それだけではない。
「いつの日か、浬くんの家にお邪魔させて頂いて正解でした。こっそり仕込ませていたカメラで着替え、トイレ、お風呂等のシーンも撮っていたのですが、凄く好評なんですよ。」
「・・・あ、・・・あ、・・・あ。」
「流石ですね浬くん。貴方の身体のおかげで、また1歩また1歩。全額返済に近付けたのですから。・・・それはもちろんこれからも。浬くんが貢献して頂けること、私は信じてますよ。」
ほんの些細な日常生活の一部も、ひどい角度から晒されていた。
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