「・・・鳴。」
俺が待ってからそこまで時間が経ってないうちに、向こうから空がやってきた。 返信はなかったままだけど、信じてたとおりに来てくれた。
「来てくれたんだな。」
「うん・・・。僕も鳴に直接、言いたいことあったから。」
でもそれは俺のためではない。 空はあれから自分で考えていたことを伝えてくる。
「俺に言いたいこと?」
「・・・暫くの間、僕ともう話さないで。」
「は?」
俺は近くにいるのに。 またそんな遠い目をして。 自分が言いたかったことを、そのまま俺に言う。
「ちゃんと友だちに戻るから。ちゃんと・・・、ちゃんと鳴のこと応援出来るようになりたいから。だから暫くの間、僕と話さないで。僕も鳴に近づかないって約束、するから。」
今まで築いてきた俺との関係を壊したくせに。 都合よくも戻そうと。戻させようとしてくる。 けど、そんな空の都合なんてお断り。
「待てよ空。俺が呼び出したんだから、俺に言わせろよ。」
ここで距離置かれたら、俺はもう2度と手紙の返事が言えなくなる。 呼び出したのは空じゃなくて、俺なんだから。 俺にも言いたいことを言わせてほしい。 けれど空は、
「・・・もういいよ。それはもう知ってる、から。」
「いいから聞けよ。」
俺の答えに怯えていた。
「もういいってば。」
「いいから聞けって。逃げんな。俺、差出人に返事ちゃんとしたい言ってただろうが。ちゃんと言わせてくれ。」
そうだよな。 1通目のとき、好きな人いるから断るって、知らない間に差出人をフってたんだもんな。 2度も同じ答えなんて聞きたくないよな。 でも俺は言う。 呼吸を深く吸って吐いて自分を落ち着かせて、きっとこう答えるのがベストだと思って。 1通目の返事も、2通目の返事も。 ちゃんと差出人に返事がしたかったから、怯える空に言ってやった。 やっと俺は差出人に返事が出来た。 頭を下げて、俺の答えを。
「ー・・・こちらこそ、よろしくお願いします。」
俺の想いごと伝える。
「え?」
「『え?』じゃねえだろ、そこ。」
「だって、鳴。だって・・・っ。」
当然だけど言ってた答えと違う答えに、やっぱり空は驚いていた。 『だって』と繰り返して、信じられない。信じてない様子。
「鳴・・・、好きな人いるって。」
「だからそれが空。俺が好き、俺の好きな人は空だから。」
「・・・だって。」
「仕方ないだろ。最初は誰か分かってなかったし、空じゃないって思ってたし。けど差出人が空だって分かれば俺だってー・・・。」
「・・・・・・・・・っ。」
「空?」
けど伝わってくれたのだろうか。 ぽろっと流れた涙を拭ってたけど、止まらなくて次々に溢れさせていく。
「これは違・・・っ・・・。」
俺は結局、空を泣かせた。 でもその姿が見るに耐えれないほど愛しくて。愛しすぎて・・・。
「ごめん。ごめんなさい、鳴。ごめんなさい。・・・ごめんなさい。」
抱き締めたくなったから、この腕の中で空を抱き締める。 この告白が。 この想いが。 嘘じゃないことを、より思い知らせる為に。 『だって』の次は『ごめんなさい』を繰り返し始めていたから、発言の元を。俺の口で塞いでやった。
「ん・・・。」
温かくて。 柔らかくて。 ちょっと涙の味がして。 知らなかった空の一部を初めて知って、もっと味わいたくて。 一度目は軽く離して、直ぐに二度目を。今度は気が済むまで奪う。 その時間は長くて短くて、愛しいという言葉を本当の意味で知った瞬間。
「・・・もういいから。謝んなくていいから、さ。それよりももっと大事なこと、答えてくれ。」
それでも空の気持ちが、もう1回知りたいから。 離した空の口から、迫った関係の答えを聞いた。
「空は俺と付き合ってくれますか?」
「・・・はい。」
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