校舎の下駄箱に投函されたラブレターに気付いてから24時間後。 つまり次の日だった明日が今日の日付に変わった朝、俺は差出人と待ち合わすはずだった渡り廊下にいた。 もちろん目的は、その彼を待つため。 昨日の夜、学習時間前に1階ロビーの自販機にて明人先輩と偶然にも鉢合せたから、その日にあったことを。すっぽかしたことと差出人にまだ会えてないことを、全て明かして再び相談したんだ。
『俺がテンパらないで、読んだ直後にちゃんと行っていればこんなことにはならず・・・。』
『でも、それってお互い様なんじゃない?』
『え?』
『だってメールやメッセージとかじゃなくて、手紙だったわけなんだから。すれ違うリスクだって、当然あるでしょ?』
すると明人先輩は、陸哉の話に鵜呑みっぱなしの俺を、先ずは宥めてくれた。 俺がやらかしたのはすっぽかしではなく、ただのすれ違い。 だからこっちだけが悪いというのは、ちょっと違う話だと。
『俺、明日もう一度。同じ場所で待ってみようと思います。今度は気付いた時と一緒の時間に。』
『差出人はもう一度来るかどうか分からないのに?』
『はい。最悪なモザイク展開だけにはならないよう気をつけてないとだけど。』
『鳴くんは、どうしてもそっちの話をしたがるな・・・。』
『だって万一って言葉ありますし。』
『そんな展開、先ず起きないと思うから大丈夫だと思うけど。』
それでもやっぱり俺はすっぽかしてしまった気持ちが、強くて拭えなくて申し訳がないから。 次の日でも演劇部の練習が始まるまで差出人を待ってみた。 向こうが俺のことに気づいたら来てくれるんじゃないかと、一人勝手に信じて今度は隠れずに。 用心してボディーガード1代目の空を、ちゃんと助っ人として引き連れていた。
「そんなに気になるの?差出人のこと。」
「気になるつーか、俺はちゃんと返事がしたいだけ。」
「もう来ないかもしれないのに?」
「それ。明人先輩にも似たようなこと言われたけど、それでも俺は待ってみる。待つことにした。」
陸上部の活動時間も今日は演劇部と被っている為、今日は大丈夫。 出入り禁止になるのは嫌だから、鬼頭にまた怒られて今度こそ邪魔しないように心掛ける。
「・・・ねえ。今、鈴木先輩の名前出たけど、この話って先輩も知ってるの?」
「え?あ、うん、まあ。明人先輩の噂信じてちょっとだけ。」
「・・・・・・そう。」
その上でも空はやっぱり仕事を果たそうとしてくれるから頼もしい。 ただいてくれるだけでも全然違うから頼もしすぎる。ホントに優秀。 途中で放棄した2代目ボディーガード(陸哉)とは大違いだ。
「あのね、鳴・・・。」
するとそのとき、
「待った!誰か来た。」
誰かがやって来る足音が。 読み通りに差出人が気付いたのだろうか。 真っ直ぐこっちにやって来て、待っていた俺に声を掛けて来た。
「何してるの?鳴。こんなところで。」
「輝夜部長!?」
その人とは、まさかのまさか演劇部の部長!? そこにいたのはなんと演劇部の女王、輝夜部長だったのだ。
|