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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#91 青ノ葉 七夕祭(後編)(2/4)
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訪れた本題

「で?何の用だ?峰岸。」

「え。」

「『え。』じゃなくて。何か用あって、こんな時間に来たんだろ?その用はなんですか?って訊いてんだから、さっさと答えろよ。」

「え。えぇーっと・・・。」

それはそうとして、さっそく本題へ。
寮長室に訪れた理由は、日暮寮長の様子を見てきてほしいと稚空から頼まれたからだ。
なので比路は、さっさと自分の用を済ませようと。

「・・・・・・・・・。」

上から下。
下から上。
寮長を見る視線をゆっくり動かして完了。

「ー・・・なんでもないです。」

「は?」

あとは戻って稚空に報告するだけ。だったのにー・・・。

「なんでもなかったら、普通こんな時間に来ねえだろ。なんだよ。言えよ。またそこの公衆電話でも壊れてたか?」

比路の言い方が悪かったのか。
酔っ払った日暮寮長の何かのスイッチが入ってしまい、そのまま捕まってしまう羽目に。



年上相手に向かって

「だから、なんでもないですってば。」

「だから、なんでもなかったらー・・・っ。ホントに面倒くせぇな、お前。」

そしてまた『なんでもない』合戦が繰り広がるかと思えば、彼の機嫌が悪いせいもあって虫の居所も悪く、ブツクサ文句を言われながら舌打ちされてしまう。
それを聞き捨てられなかった比路。

「なんでもないから、なんでもないって言っただけなのに、いくらなんでもそんな言い方ないでしょ!?友達が寮長のこと心配してたから代わりに見に来ただけだから。僕から寮長に用なんて特にないよ。」

「用もねえのに来んな。こんな夜遅い時間帯で、テストも控えたこんな時期に。・・・よりにもよって、こんな時に。」

「駄目ですか?用もないのに来ちゃ。」

「お前の面倒臭さに構ってやれるほど、こっちも今、暇じゃねえっつってんだ。」

10歳以上も差がある年上相手に向かって、ムッとした顔で反発してカッとなった。



比路と日暮寮長の仲

今まで比路は久野と一緒にいることが多かったから、その流れで日暮寮長とも接する機会も多かっただけ。

『峰岸って、寮長と割と話してる仲じゃん。』

『あの3人の中で、ひろピーが1番、寮長と話してる仲だと思うから・・・。』

田邊から言われたことも。
稚空から頼られた理由も。
本当は、いまいち頷けられなかった。
だって久野と日暮寮長は確かに仲良いけれど、まだ比路とは、そこまでの仲ではないから・・・。

「もういいです。帰ります。用あっても、もうここには来ないですから安心して下さいね。」

「おま・・・っ、俺の言い方悪かったなら謝ってやっから。最後だけは取り消せ。それ普通に後で俺が困るやつになるだろ。」

「知りません。さようなら。」

怒った比路は怒ったまま、この部屋から出て行こうとする。

「ホントに全然懐かねぇ奴だな。コラ、ちょっと待てって。」

その時、だった。



出て行ったかと思いきや

デスクに手を付くほどフラついた日暮寮長。

「ッ!」

あれだけの量のビールを飲んだのだ。
我ながら飲みすぎたことを少し反省したのか、そんな自分に言葉が出なかった。

「・・・・・・・・・。」

けど、さらにその時ー・・・。

「ちょっと大丈夫?」

「!」

部屋を出て行ったと思ってた比路は、フラついた寮長の音に気付いて、あのまま出て行くどころか、寮長の元へ心配そうにやって来る。

「フラつくほど酔ってただなんて、いくらなんでも飲み過ぎだってば。このご時世なのに、学生寮でホントよくやれるね。信じらんない。」

「今日はアレだ、アレ。雨降ってっから気圧も下がってて、いつもより酔いが回んの早かっただけだ。峰岸が心配するほどー・・・。」

「お水、いる?買ってこようか?僕。」

「・・・・・・・・・ん。」

この比路の行動が、寮長は読めなかったのか。
色々と言いたいことがあったが、その最後は大人しく静かに頷いた。



ソファーに倒れ込む2人

お酒を飲みすぎた日暮寮長に、玄関ロビーの自販機で買ってきたミネラルウォーターを渡したあと、彼を安静させられそうな場所へ。
さすがに彼の自室までは少し距離があるから、それより近いソファーへと運ぼうとする比路。

「肩、貸すから。せめてあそこのソファーのとこまで頑張って歩いて。」

「峰岸の肩借りる意味ー・・・、ちょっとはあるか。」

貸した肩を組ませて、寮長と一緒に、ゆっくり進む。
2人の身長に差があるのでバランスが悪く見えるが、柔道をやってただけあって、運ぶことには難はあまりないようだ。
しかしソファーに辿り着いた、その最後で。

「わっ!?」

「危な・・・っ!」

比路がバランスを崩し、庇った日暮寮長。
そのまま2人とも、ボフッとソファーの上に倒れてしまう。

「ー・・・ったく。危ねえだろ。こんな時期に峰岸まで怪我させたら、克也に何言われるか。」

「ご、ごめんなさい。足が滑っちゃって。」

日暮寮長の上には、比路が。
比路の下には、日暮寮長が。
おかげで怪我はなかった2人だったが、その形は比路が日暮寮長を押し倒したことには変わりなかった。
ー・・・が。

「大丈夫か?峰ぎー・・・っ!」

「う、うん。大丈ー・・・・・・。」

互いに見合った瞬間、事故った2人。



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