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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#85 青ノ葉 林間録(中編)(4/5)
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空の落とし物

「なんだよ、空。オレもいちゃ悪い話なわけ?」

「うーん・・・、ううん。陸哉なら、いい・・・かな。」

けど悩んで悩んで決め抜いて頷く空。
陸哉もいていいからと。
矢口に話したかったことも、ようやく続けて話しする。

「待たせてごめんね、純平。あんまり大きな声で言いたくないんだけど、最近、陸上部のグラウンドでキーホルダー見なかった?」

「キーホルダー???」

「うん・・・。お守りっぽいデザインのやつなんだけど、ちょっと前に何処かに落とした・・・みたいで。ずっと・・・、探してて。」

彼は部活中、陸上部のグランド内で落とし物をしてしまったようだ。
特徴を伝えて尋ねたが、心当たりがないと矢口に首を横に振られる。

「見てないけど、鬼頭とかには訊いてみた?」

「ううん、まだ。さっき話が逸れちゃったから、また後で言うつもり。今はちょっと・・・。」

するとそれを見た空は、悲しそうに肩を一段落としてしまう。



バカって誰のこと?

そんな空の一連の言動を、近くにいて1発で見抜いた陸哉。

「なるほど。バカからのヤツか、それ。」

暴言上等で、そう口にする。

「う・・・、ん。確かそうだけど、そんな風に言わないでくれない?陸哉。」

「バカだからバカだって言ってやってんだろ?バカをバカだと言って何が悪い。」

「そんなにバカバカ言ってるとこ見られたら、また怒られるってば。」

それにつられて空までも暴言を口にしたけれど、それは誰のことを指しているのか。

「羽崎も真柴も、バカって誰のこと?」

聞いていたことを思わず尋ねた矢口だったが、

「あ?あー・・・、こっちの話。純平には、あんま関係ない話だから。」

「???」

「ごめんね純平。でももし部活中に、それっぽいモノを見つけたら、教えてほしいかも。・・・出来ればなるべくこっそりで。」

空も陸哉も、それ以上語らず、矢口を巻き込まなかった。



触れようとして触れなかった手

落とし物をしたことを後悔をする空。
どうやらそれは、よっぽど大事にしていたモノのようだ。

「・・・・・・・・・。」

そんな空を見た陸哉は、見るに見兼ねたのか。
一息溜めた息を吐いて、触れようと手を伸ばす。

「空ー・・・。」

その時、

「ちょっと待った!」

「!」

「・・・・・・・・・。」

ここにやって来たばかりの鳴が、陸哉のその手を見てしまったようで、敵意強めで声を掛けた。

「陸哉。今、俺の空に何しようとした?」

「・・・・・・・・・。」



修羅場?修羅場?

鳴は目撃した以上、その手が許せられず、空と陸哉の間にズカズカと入る。
しかし陸哉は、この手を直ぐにしまったが、そんな鳴を相手にしないで無視。

「それじゃあ空。佑先生とカトケン待たせてるから、純平連れて戻るわ。」

「あ・・・、うん。」

「あ、こら陸哉!俺を無視すんなって!!」

空に一言伝えた後、そのまま矢口を連れて帰ろうとした。
でもその陸哉に無視されっぱなしな態度自体は今回だけではなく、以前から続いていたこと。
だからそれが今日という今日こそ頭にきた鳴。

「陸哉!ちょっと待って!」

「!」

「いい加減なんなんだよ!ずっとずっと俺ばっかり無視しやがって!」

去ろうとする陸哉の肩をとっ捕まえたが、

「痛・・・っ!?」

「バカ移されたくないから、触んないでくれない?」

「何も引っ叩くことないだろ!陸哉。」

鳴の手は引っ叩かれてまで払い退けられてしまう。
そんな現場を鳴と同じように、やって来たばかりで見てしまった月島。

「え?なになに?お陸と鳴っちで修羅場?修羅場?」

「「・・・・・・・・・。」」

ドキドキと好奇心を旺盛にさせて、『修羅場』というワードにワクワクしていた。



修羅場?修羅場? 2

月島まで訪れたことにより陸哉は「これ以上いたら、ホントにバカ移るから帰るわ」と。矢口を連れて今度こそ、この場を去っていった。
鳴も鳴で月島に言われたことを大否定。

「全然違うから、優介。あっちが俺を一方的に無視しまくってるだけだから。俺もなんなのかよく分かんねえけど、修羅場とかそんなんじゃないから。」

「えー、そうなの?なんだー、つまんない。」

だけど結局、陸哉に無視されまくる理由は、鳴にもよく分からなかった。
とはいえ、陸哉が空に触れようとしたのは確かな事実。

「空、大丈夫?何かあったのか?急にいなくなるから優介と一緒に捜してたんだけど・・・。陸哉と何を話してたんだよ。」

「陸哉と、じゃなくて。僕、純平と陸上部のことで話してただけだよ。陸哉はたまたま純平と一緒にいただけだから、あんまり関係ないかな。」

「ふーん・・・。まあ、それでも気を付けろよ空。俺としては、あんまり・・・その、陸哉と2人になってほしくないんだから。」

「・・・・・・・・・うん。そう、だね。」

だから注意喚起を促したが、それはもちろん月島も聞いていたので。

「やっぱり修羅場?修羅場?」

「だから違うってば、優介!」

もう一度『修羅場』というワードに、ドキドキとワクワクさせてしまったのだった。



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