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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#85 青ノ葉 林間録(中編)(2/5)
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掃除中は持たないよう言われていたから

「とにかくオレは、こんなんで動けねえっつーか、極力動きたくないんだから。行くなら自分1人で勝手に行けよ。」

久野の言葉を聞き入れないのには、そういった訳もあったから。
けどそれ以外にも、もう1つ理由があった。

「そもそもお前、色々頼んだって言ってたけど、上にいる奴らと連絡手段出来るもん。スマホとか今持ってんのかよ?」

「え?あっ!・・・しまった、まだバックの中だ・・・った。」

「だろうな。生徒会でもあり模範生でもあるお前が、違反犯すような真似するわけねえもんな。」

「違反というか、掃除中だったんだから仕方ないだろ。その間は持たないようにって、先生たちに言われてたし。」

クラブハウスを清掃中は、スマホを持たないようにと。
先生から指示を受けていた為、従った久野は今、連絡手段が何もない状態。

「だっっっさ。連絡手段もない状態で、何も考えずに崖から滑り降りて来るとか、役立たずにもほどがあるだろ。何、野次馬しに来てんだよ、ホントに。」

「それはー・・・ごめん。謝るよ・・・、本当にごめん。」

それを犬飼に指摘されてから気付き、改めて下手に動かない方が賢明な状況となった。



功を奏して幸を呼ぶ

そんな久野の一方で、従ってなかった犬飼は、ちゃんと自分のスマホを所持していた模様。
落ち込む久野にチラチラと、嫌がらせのように見せつける。

「まあ、どの道スマホ持ってたとしても無理だけどな。ここまで電波、入ってこないないみたいだし。」

「え?あ!なんで今、スマホ持ってんの!?」

「オレは元々、掃除なんかする気さらさらなかったから。先公に従わない方が功を奏するとか、ざまあとしか言いようがない展開だな。」

しかし電波が入らない以上、連絡手段がとれないことには変わりない。
持っていても、それはただの機械。ただのガラクタだ。

「俺の身長でも無理そうかな?それ。よく言わない?スマホとか電波を受信する機械って、高い位置のが受信しやすいって。」

「ならやってみろよ。どーせ、無理だろうけど。」

でも犬飼が持ってるスマホの位置を変えたら。
ひょっとしたら電波拾ってくれる可能性があるかもしれない。
それを久野が試した結果、

「あ・・・、1本たった。えぇっとこっちのことは桃地のにメッセージ送っとくよ?冥の連絡先は、さすがにないみたいだから。」

「・・・・・・・・・おう。」

183cmの高身長が幸を呼んだのか。
2人がいる今の位置を、桃地に送信。これにて無事に報告完了。
それを見てた犬飼は、役立たずの久野がただの役立たずで終わらず、少し複雑だった。



そのおかげ?そのせいで?

そのおかげで?そのせいで?
また戻ってきてしまった会話。

「それじゃあ犬飼、万が一でも熊とか出たらホントに危ないから。ここにいるよりも、あの小屋にいた方が安全そうだから、あっちに行こう。」

「だからオレは行かねえってば。行きたきゃ1人で勝手に行けって。」

この場に残るか。
ここよりも安全そうな小屋に行くか。
久野も犬飼も。どっちも自分の意見を、譲らず折らせない。

「桃地にも、あそこにいるって。さっき送ったメッセージで伝えたから。ここから犬飼も動いてくれないと。」

「何、勝手に話進めてくれてんだ。オレは行かないって言ってんだろ。誰がお前なんかの指図聞くかよ。」

「はぁ・・・。強行手段をとるの、あんまり好きじゃないんだけどなー・・・。」

だからそのおかげで?そのせいで?
疲れた息を吐いた久野。



持ち上げる者と持ち上げられた者

平行し続ける主張を、無理矢理になってでも途切れさせるように。
久野は足を負傷して動けない犬飼を、肩で軽々と担ぎ上げる。

「これでよし・・・っと。」

「!?、!?、!?」

犬飼程度の体重でも、日頃から鍛えてる身体のおかげで余裕で運び出せた。
その一方で犬飼は突然持ち上げられた挙げ句、こんな形で簡単に自身を運ばれて、再び驚きも文句も満載。

「だーッ!!!いきなり何してんだ!お前!」

「最初からこうすればよかったのか。なるほど、なるほど。」

キャンキャン、ギャンギャンと。
何度もうるさく吠えたが、今度は久野が聞く耳持たず。
この思いきりも日暮寮長の影響が受けてしまっているのか。
こんな自分を自分だけで大いに納得。

「お前がいつまで経っても動こうとしない方が悪い。」

「オレは行かないって、ずっと始めから言ってんだから当たり前だろ!誰がお前なんかと一緒にいるか!」

「犬飼が俺を嫌うのはどうしようもないことだけど、こういう時ぐらい休戦してもいいんじゃないか?誰も獲って食おうとしてるわけじゃないし、俺だって今はこういうことでぐらいしか役に立てないんだから。」

先ほど犬飼から言われた『役立たず』を気にしていたようだった。



今までで1番近い距離

しかし犬飼にとっては、これは過去イチレベルな久野との至近距離。
いきなり担がれた時はビックリして驚いたが、運ばれてる今も、顔が赤くなるほど高鳴る鼓動は本当に驚きだけが原因?

「・・・・・・ッ。」

なぜ?
どうして?
なんで?
こんな奴なんかに・・・っ。
たくさん募る疑念。
強く反発する思い。

「ん?あれ?なんだろう?この音。」

「!?!??!」

そしてこの音を久野に気付かれそうになった途端ー・・・。



反発した結果

「ねえ?犬飼。なんか変な音聞こえー・・・「・・・っ・・・なせ。」

「え?」

「離せっつってんだろ!!オレに触んなんじゃねえ!!!」

「!?」

その全てを否定したいが為に、大いに暴れ出した犬飼。

「バカ!そんないきなり暴れたら・・・ーッ!?」

そのせいで平然と保っていたはずのバランスを崩した久野。
エグかった斜面にはなかったから油断してたのか。
担いでいたから足元までよく見れてなかったからか。
自分から落としかけた犬飼を庇おうとした途端、

「ー・・・ッ!」

近くにいた岩の存在に気付かぬまま思いっきり膝をぶつけてしまう。



反発した結果 2

「・・・え?」

その鈍い衝突音は犬飼の耳にも届いていた。
でもその一瞬は何が起きたのか、理解が追いつかなかった。
だけど強く痛がる久野の膝から血が溢れ出ているのを見て、ハッとした顔でやっと岩の存在に気付いて、たった今起きた出来事にも気付く。

「大丈夫か?おい!」

「ー・・・っ。」

「おいって!」

「ー・・・・・・っ。」

しかしそんな久野に呼び掛けても、返事が返ってこない。
いや、ぶつけた衝撃の痛さが激しいせいで、したくても出来ずにいるし、溢れる血は止まらないまま。

「ああ、もう!クソが!」

「犬・・・飼・・・?」

それを見て犬飼は居ても立っても居られず、着ていた半袖の袖部分をビリビリ破いて、これで包帯代わりに止血して応急処置を。
急いで負傷してる膝に強く巻きつけた。

「あ・・・、ありがとう・・・、犬飼。」

「礼なんかいらねえよ。」



負傷者1名追加

なんで彼がこんな知識持っていたのだろう。
そんな疑問、今は置いといて。
これで負傷者が1人から2人に増えてしまった最悪な状況。

「それよりお前、少しは動けそうか?」

「え。」

「あそこに行けば・・・、いいんだろ?」

「え?え?」

それでようやく反発心が弱まったのか。
今度は犬飼は久野の腕を肩にかけて組み、あの古びた小屋っぽい建物へ。

「ちょ!?ダメだって!犬飼!そんな足で俺なんかを組んで運んだら!」

「オレの足は少し挫いてただけだから、お前の膝よりは軽症のうちだっつーの。なのにお前が大袈裟にオレなんか担ぐからっ。」

「・・・ごめん。」

「あ、いや。それを言うならオレのー・・・。とにかく今は休戦してやるよ、こんな時ぐらい。」

ゆっくりゆっくり歩いて目指す。



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