FFIアメリカ戦前日―――


今日は朝から明日のアメリカ戦へ向けて練習をしていたが、万全な調子で挑む為に練習は午前中までになっていた。

ホイッスルが鳴り響き、練習終了の合図を送る。
それと同時に選手達は動きを止めた。
いつもよりハードな練習だった為、ホイッスルの音に安堵の声が漏れる。


「ハアッハァッ…」

そんな中風丸は、隣を走っていた妙に色っぽい雰囲気を出す吹雪を凝視していた。

紅潮した頬に汗が伝う真っ白な肌、酸素を求めて上下する体…
何というか、色っぽい。


「あっ、風丸君」


少し不純な考えをしていた風丸は、後方から声を掛けられ戸惑っていた。
声を掛けて来たのは数秒前まで色っぽい雰囲気を出していた本人。

急いで先程の考えを脳の片隅に無理矢理押し入れ、動揺しているのが気づかれないように返事をする。


「吹雪、なんだ?」

振り返ると、ニコニコと可愛らしい笑みを浮かべる吹雪。
何かいい事でもあったのだろうか。


「今、考えている必殺技があるんだ
それにはスピードが必要なんだけど…」

そこまで言い、言葉を切る。
どうやら風丸の出方を伺っているみたいだ。

期待と不安の入り混じった表情で、じっと風丸の言葉を待つ。
その様子はまるで、犬がご主人様の指示を待っているのと似ている。


「いいぜ、やってみよう!」

風丸がそう言うと、吹雪の表情は途端に明るくなった。


「ありがとう風丸君!
じゃあ、技について話し合いしたいから、お昼終わったら僕の部屋に来て貰っていいかな?」

「ああ」


承諾の返事をすると同時に吹雪は鬼道に呼ばれた。
また後で、と言葉を残して吹雪は元へと駆けて行く。

「吹雪の部屋…か、」


吹雪士郎―――風丸の想い人の、プライベートな空間に足を踏み入れるというその行為は何だか特別な気がした。

早くその時が来ないかとワクワクしながら、風丸は昼食を取りに食堂へと向かった。