▼35
朱雀召喚が失敗し、後片付けに追われる中、朱雀七星士と美朱は神座宝を探しに北甲国へ行くことが決定した。その間、華は軫宿の元で治療を受けながらひたすら井宿の説教を聞くハメとなった。

「2度と勝手に無茶をしないで欲しいのだ」
(わかった……わかったから、ね?)
「全然わかってないのだ!」
軫宿の能力を使って、何故か切れていた腕を治してもらう。痛みがスーッと引いていき、みるみるうちに傷が塞がっていくのがわかる。しかし、問題が一つあった。
「……井宿」
「だ?」
華の腕を治していた軫宿が驚いた顔で井宿を呼んだ。それまで説教に勤しんでいた井宿が声に反応して顔を向ける。
「華、ちょっと袖を捲るぞ」
(ん、大丈夫)
「これは……」
華の返事と同時に捲られた服の下から現れたのは、小さな鱗。人間の肌の上に、鱗がぽつぽつと乗っていた。
(どうかした?)
切り傷の下から現れたそれを見て、井宿と軫宿は息を飲む。腕の外側にあるため、華は気づいていないようだ。
2人は顔を見合わせてどうしたものか、と悩む。
しかし、結局華には伝えなかった。

「変な切れ方してただけなのだ……」

華の問いかけに掠れた声で井宿は返す。その鱗になんとも言えない不安を感じ、井宿はさっさと包帯を巻いて隠してしまうと、再び華への説教を始める。
それをややうんざりした顔をして聞く華は、どこか楽しそうであった。




「美朱〜華〜」
美朱に付き合って、部屋で教科書を開いていると、外から柳宿の声が聞こえてきた。何事か、と顔を外に出せば柳宿が何やら衣服を持ってそこに立っていた。
「柳宿?  どうしたの?」
「ねぇ、お祭り行かない?」
(お祭り?)
「そ!  今日お祭りがあんのよ〜。どうせ神座宝を探す旅に出ちゃったらゆっくりする時間も、暇もなくなるし。ね?」
(ありがたいけど……)
ちらっと美朱の方を見る。何やら今朝から様子がおかしいのだ。昨夜、井宿からの長い説教が終わってげっそりとして部屋に戻る途中で、ひどく沈んだ顔で池を見つめている美朱の姿を華は見ている。
しかし、美朱は目を輝かせて開いていた教科書を勢いよく閉じるとたちあがった。
「行く!」
「じゃあ、今からこれに着替えて」
ずいっと、渡されたのは柳宿が持っていた衣装。一つは美朱用らしく、カラフルで可愛らしいデザインのものだった。そして、もう一つは紫などの落ち着いた色合いの大人びた服。
「華は、これね」
紫が散りばめられた服を渡される。戸惑いつつも受け取り、柳宿の顔を見た。その顔はどこか楽しそうだ。
(……紫って、結構高いのでは……)
「あー……いいのよ、気にしないで。星宿様の為にと用意してたんだけど、全く後宮に来ていただけなくて、1回も着てないんだから……」
(ご、ごめん……)
落ち込んでしまった柳宿に慌てて謝罪する。すると、何やら不穏な笑を浮かべた柳宿が、手を握ってきた。
「謝る変わりに……」
どんっとかなり力加減をされて、美朱と共に部屋に押し返された。ぽてん、と2人揃って布団へと転がり慌てて身体を起こす。しかし。
「このアタシに、何も言わず、言う事聞いてくれるわね?」
(で、でも……)
「でも、も禁止!」
柳宿にえりを掴まれた。思わず小さく悲鳴がこぼれる。しかし、そんなのもお構い無しに柳宿はさらに力を入れると。
「覚悟なさい!」
ガバッと左右に襟をわり開いた。


そして、美朱の部屋からは悲鳴と暴れる音が数分なり続け、何事かと駆けつけるもドアの前にぶら下げられた紙を見て去っていく。
井宿も例外ではなく。
悲鳴に慌てて駆けつけたが、ぶら下げられた紙をみて、心底迷惑そうに眉を寄せると、何も言わずにその場から立ち去った。



その紙には


『着替え中。
男の断ち切りを禁ずる。
なお、逆らった場合は柳宿様のいたーいげんこつと、星宿様からの処分が待ってます?』


と書かれてあったらしい。
ちなみに、その筆跡は紛れもなく星宿の字で。下の方にちょこんと押されている印鑑も星宿のもので。
誰も手出しできないのは致し方なかったのかもしれない。





?おまけ?

翼「柳宿も男やないか……」
張「ですね」
鬼「でも……」

井「まだ死にたくないのだ」

張「僕も同感です……」
星「私もだ……」
鬼「柳宿の力加減は、加減じゃないからな……」
井「ところで、星宿様。あの紙の文字は星宿様のものでは?」
星「私に死ねというのか井宿」

星以外「あ……っ(察し」

井「全く……困ったものなのだ。華も一緒になってこもっているし……」
鬼「井宿は、華の事が気になって仕方ねーんだなー」
翼「ひゅーひゅー!」
軫「ところで……美朱の悲鳴もしていたが、鬼宿いいのか?」
鬼「……。」


井「お互い大変なのだ……」



?おしまい?



back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -