きっと明日には

(あ、)

振り返ってもう一度見てみれば、やっぱり見慣れた蜂蜜色だった。

いつものように声をかけようと思って、やめた。


…だってアイツの隣には、同じ蜂蜜色があったから。
笑い合いながらどんどん遠ざかって行く背中をただ黙って見つめていた。

そんな笑顔一度だって私に見せた事ないのに。
大体何なんだ、美人にデレデレ鼻を伸ばしちゃって。
いつも雌豚だのと馬鹿にしているくせに自分も結局男なんじゃないか。いや、性別は男だけど。
それにああいう美人は大抵裏があるのだ。それに騙されるなんてまだまだガキだな。

よくそんなに出てくるな、と言うほどのアイツへの罵詈雑言を心の中で吐いて、気が付いた。

これじゃあまるで私がアイツに嫉妬しているみたいじゃないか。
…私がアイツのことを、好きみたいじゃないか。

そんなはずはない。あんな変態クソドS。
まあ変態なだけじゃなくていい所も…って違う違う。
とにかく、私があんな奴を好きだなんて馬鹿げている。
そんなこと地球が360°回ってもあり得ない。アレ?360°って元に戻るんだっけ?

それよりも、女と歩いていたことで明日、からかえるじゃないか。悩んでいて酢昆布も美味しく感じられなかった。そうだ、酢昆布もついでに買わせよう。
そう気持ちに踏ん切りをつけ、万事屋への道をまた歩き出す。

まだもやもやしている自分の心が、果たして明日思った通りの台詞を言えるか、まだ分らないけれど。
きっとご飯を食べて、風呂に入ればこんな思い何処かに消えているだろう。


きっと明日には
(いつもの私だと信じて)






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