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名前は忘れた。(というか知らない)
学校一のイケメンではあったが、妙にスカした野郎だったのは間違いない。
「瀧川さんってさ」
少女漫画のセオリーかってワンシーン。
壁際に追いやられた女、それを逃がすまいと顔の横に両手をついた男。
「…俺の事、好きだろ?」
ポジティブ
その日、あたしは学校を去らざるを得ない結果になった。
ママは泣いていた、パパは何も言わなかった。
だけどあたしはその名前も知らない男をフルボッコにした事は全く後悔していない。
だってムカついたんだもん。
「普通、いきなり初対面の女の子に迫る?ていうか好きじゃないのに好きだろとか言われても…心外(笑)」
「いや、(笑)えないからな?(笑)っちゃいけないからな?…つーか…同じクラスなのに初対面とか無いから!」
とりあえず、殴ったあたしが悪いのは悪いらしいけど、相手がいきなり迫ってきたとかそういう『致し方ない』理由も若干考慮された、が、どうやらそのスカしたイケメンは地域のお金持ちのボンボンだったらしく、やっぱりあたしは学校を去らなきゃいけなくなった。
ママは泣いていた。
「だって…綾瀬ちゃんが転校なんてしちゃったら、ママ、綾瀬ちゃんの新しいクラスのお母さん方と仲良く出来る自信無いもの!」
とりあえず、今日あたしはスカしたイケメンが嫌いになった。
プラス、お金持ちのボンボンも嫌いになった。
パパは何も言わなかった、訳じゃ無いけどあたしを責めたりはしなかった。
「…殺るなら徹底的に殺れ、フルボッコなんて温すぎる…いや待て、俺が綾瀬の代わりにあのスカした野郎をぶっ殺してくればいいのか」
何かブツブツ言ってたけど、あたしにはよく聞こえなかった。
というか、パパが独り言に夢中になりすぎてあたしに何も言ってくれなかった。
うちの両親を前に担任が「お前という人間が親御さんを見てよく分かったよ」と言いながら、転校の手続きをしてくれた。
今日、この集英高校を去ります!
このダッサイブレザーともおさらば!
そして、来週から「銀魂高校」なるところに転校する事になった。
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