009


「起立ー、礼ー」
「さよーならー」
「お前らお巡りさんにパクられんなよー」

じゃーな、とダルそうに挨拶する担任(だったはず)、挨拶が終わるか終わらないかでさっさと部活やら自宅やらに向かうクラスメイト達。


「…さっさと帰ろ」

ともかく疲れた。いや、何もしてないけど。
鞄に荷物をまとめて肩に掛けた。


「よォ、帰んのか?」
「………誰だっけ」


あたしにしては珍しくインプットされるクラスの連中。
とりわけ隣の席の気持ち悪い変態みたいなコイツは嫌でもインプットされたけどもうあたしの頭容量いっぱいサヨウナラ。





デリート







「だからよォ…いい加減拗ねんな」
「拗ねてないけど」
「こっちだって割りと真剣に探してたんだぜェ?ようやく見付けたんだか」
「だったらそのようやく見付けた10円玉でチロルでも買えよ」
「誰が10円玉落として血眼になって探すんだよ」
「お前だよ」



何故だかあたしの家路をストーカーのようについてまわる鬼太郎みたいな変態ちんちくりん。
そして言っている事が支離滅裂過ぎ。

「…気持ち悪い、ホントキモイ。なにアンタそれ、新手の口説き文句?確かにあたしが木村カエラに似てて可愛い過ぎるからって」
「似てねーよ、一万歩譲って似てたとしてもその髪型だけだ」
「なんだよ自分はゲゲゲの鬼太郎意識しちゃって」
「してねーよ!」


はぁ、と溜め息を漏らすなんとか君、それを見てこっちも溜め息をつきたくなる。
疲れたのであった。

「なんとか君」
「高杉だ」
「バカスギ君」
「…………」
「なんなのホント、一目惚れですかァコノヤロー」
「…あぁ、そうだな。それもあながち間違っちゃいねェかもな。」










「ただいま」
「お帰りなさい綾瀬ちゃん、眉間に皺が寄ってるわよー」
「うん…ママ、あたしもう寝るね」
「あらそう?うふふじゃあ久しぶりにパパとデートしちゃおうかな〜こどもはさっさと寝なさいね」

昨日も「綾瀬ちゃん転校前夜祭をパパと二人でしてくるわ」ってデートしてたじゃんとは言わず、部屋に雪崩れ込む。


制服を脱ぎ捨て部屋着に着替えた所でベッドにダイブ。

おもむろに天井に拳を突き上げ、しげしげと眺めてみる。


「…やっぱり殴るんじゃなくて蹴飛ばせば良かったのかも」


ジンジンと痛む右手を擦りつつ、そのまま眠りについた。

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