「ここのジェラートはピスタチオが格別に美味しいのよ」
数年前、ジェラートのショーケースの前でどれにしようか悩んでいた茜李にそう声をかけてきた女性がいた。
凛として美しいその人は丁寧に塗られた赤いネイルでショーケースを指差して教えてくれたのだと茜李はその時と同じピスタチオの味のジェラートを食べながらジョルノに話をする。
「元気にしてるかな?あれから3年経っちゃったし……」
「元気にしてると思うよ」
「そうだよね!」
ジョルノが守っているこの街で元気で平和に暮らしているといいな、と茜李は頷く。
「──Buongiorno,ボス」
「ああ、君か……」
ふと声を掛けてきた女性は組織の人間だったのか、ジョルノがチャオ、と手を挙げた。
「アデレード」
そう名前を呼ばれた女性がにこりと微笑む。その笑顔に茜李の記憶が鮮明に思い出される。
「あ!ジェラート屋のお姉さん!」
「ふふ。Si.Sono io.初めまして、茜李。綺麗になったわね」
「えっ、えっ!?」
頭にクエスチョンマークを浮かべる茜李にジョルノが以前警護役としてアデレードをつけていたことを説明した。
「だが……接触しないように言いませんでしたか?」
ジョルノがアデレードに命令した内容はこっそり茜李の警護をすることであり、接触は避けるようにと言ったはずである。
しかしアデレードは悪びれもなく頬に手を当ててしれっと答えた。
「だって可愛くて」
「もう……あなたは……」
「それに……彼女の言うとおり、偶然会ったのよ」
ハァ、と溜め息をつくジョルノに構わずアデレードが茜李に向かって「ね?」とウインクを飛ばしたのだった。
ハイヒールはおしゃべり
再会は鮮やかに