くしゅん、とくしゃみを三回続けてしたところでみほりは“噂でもされているのか”と鼻を啜る。
突然壁に見慣れたジッパーが現れ、中からブチャラティが顔を出した。
「アデレードが君に会いたがっている」
挨拶も前置きもなくブチャラティは一言そう言うとみほりの腕を掴んでジッパーの中へ引き込む。
そして連れてこられたのはブチャラティチームのアジトであり、ブチャラティはジッパーの中からぽいっとみほりを出した。
「アデレード。君の為に彼女を連れてきた」
「Grazie!ブチャラティ、流石あなたね」
アデレードがブチャラティの頬にバーチをする。
「じゃあ今夜は俺とデートを、」
「Si.約束ですものね」
熱のこもった目でアデレードを見つめていたブチャラティは仕事があると言って再びジッパーの中へ消えた。
「それで?私が呼ばれた用は何かな?」
「時間の無駄にしかならない自称探偵とか言う低俗な人間の推理を聞かされてうんざりしていたの」
「……まさかそれだけで?」
「Si,あなたに会いたい理由としては最も適当な理由よ。私のレディ・シャーロック」
「アイリーン・アドラーからの呼び出しなら致し方あるまいね」
みほりとアデレードのやりとりを隣で聞いていたアバッキオが気怠げに呆れながら尋ねてくる。
「今度は何だ?少女探偵から女版シャーロックか?」
推理小説の登場人物に準えたみほりとアデレードの互いの呼び方を何の説明もなく理解しているところは流石アバッキオと言ったところだろう。
「少しは成長したってことか」
アバッキオはふんと鼻を鳴らしながらみほりの身長のことに言外に触れると、みほりはソファーにあったクッションを掴んで振り上げた。
「全く君も少しは成長したまえ。人の地雷に触れるなと言っているだろう!図体ばかり無駄にでかくいやがって君たちはっ!」
みほりはアバッキオの届かない頭になんとかクッションをぶつけようと怒り、アバッキオもハンズアップして降参する。
「È stato male.……君たちはって……俺と誰を含めていやがるんだ?」
その質問にみほりが指折りながら律儀に名前上げていく。
が、その中にアバッキオの気に入らない人物の名前はない。
「ほぼ全員じゃあねぇか。何故そこにジョルノが含まれていねぇんだ。あいつも該当してるだろ」
「彼はお気遣いが出来る」
みほりの言葉にアバッキオは更にジョルノへの苛々を募らせる。
「みほりに口で勝とうだなんて10年早いわよレオーネ」
舌打ちするアバッキオにアデレードがクスクスと笑いながらぽんぽんと彼の背中を励ますように叩いた。
「アバッキオ君、気にすることはない。君は腕力ではわたしに簡単に勝てる」
「嫌味なのか慰めなのかどっちだクソチビ」
「だから地雷ィィ!!」
舌の根も乾かぬうちに再びみほりの地雷を踏んでしまったアバッキオは彼女に脛を本気で蹴られて呻いた。
「二人とも仲良しね」
「「何処が!?」」
声を揃えて抗議するみほりとアバッキオにアデレードは益々楽しそうに笑った。
リベラルにいこうぜ
喧嘩するほど仲が良い