先程から床に座ったブチャラティとリゾットがソファに並んで座るアデレードとカナライアに何やら説明している。
気高く美しい想い人がいるにも関わらず、二人のように実直な男でも浮気はするらしかった。
あれは事故だ、任務で仕方なく、などと二人にしては珍しく言い訳のような言葉を連ねていた。
一方でアデレードとカナライアはと言うと弁解する男たちには目もくれず、マニキュアの小瓶を弄びながら一言。

「あなたの好きにしたらいいわ」

普段と少しも変わらない声音で放ったアデレードの言葉にブチャラティの顔が一瞬にして青ざめた。
怒りや呆れから出た言葉ではなく、本心だということはアデレードという女を知っているブチャラティとしては成す術がない。
それを隣で見ていたリゾットがちらりとカナライアを見上げれば、カナライアはマニキュアの刷毛で爪を撫でながら時折フーッと息を吹き掛けていて、目の前のリゾットのことなどまるで眼中にない様子だった。
彼女もまた怒りや呆れではなく、関心の無さからどうでも良いことなのだ。

「ねぇ、キャリー。その色素敵ね。とても似合っているわ」

「ありがとう、アディー。ブランドの新色よ」

「他の色も試してみたいわ」

「買い物へ行きましょうよ」

「ええ、そうしましょう」

互いを愛称で呼ぶ美女たちは床に座る男たちに目もくれず出ていった。




数時間後、二人がプロシュートを伴って帰って来た。

「Grazie,プロシュート」

「荷物持ち、ご苦労様」

「女王様たちのお供なら喜んで」

未だ床に座るブチャラティとリゾットを見たプロシュートがハンッ!と鼻で笑う。

「良いザマだなぁ、ええ?」

「まだやってたの?邪魔よ」

アデレードがブチャラティの身体を退かすように足を動かせば、ブチャラティは弱々しく立ち上がった。
アデレードの隣に立つプロシュートが気に入らないが、今の彼にはそれを指摘する権利はない。
リゾットも立ち上がってカナライアに再び弁明しようとすると、カナライアが振り向いて口を開いた。

「というか私たち、付き合ってたのね」

ガーン!という音が聞こえてきそうな絶望的な言葉にリゾットは再び膝をつき、暫くは立ち上がることはなかった。




女王たちの飼い犬

跪いて足をお舐め




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