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舞良は昼休みが終わった後の授業の間、恋と響に起きた切ない問題について悶々と考えていた。
響の話を聞く限り、響も恋を気にかけている。
それがどの程度なのか舞良にはわからなかったが、響が恋を突き放すのを躊躇っている事には気付いていた。
一見、本当に婚約者を愛から恋に変えてもいいように思うが、愛と恋では全く違う話になってしまうのだ。
愛は成績優秀、国立大へも進む気でいるし、間違いなく合格圏内の人間だった。
おそらく大学卒業と同時に入社し、数年も経たずに社長の座を手にするはずだ。
もしその予定が狂うとも、愛は灰宮社の重役にはなるし、商談としては完璧だった。
恋はというと、絶望的とは言わずとも成績は優れず、そもそも単位ギリギリのサボり魔だった。
適当に進学をするつもりで、次男坊の生活が身に染み付き、就職の事など全く考えてなかった。
学校で枠にはめられたお坊ちゃま達にとって、余りに自由気ままな恋は憧れの的で、男女から別け隔てなく人気だった。
その為清子は恋を甘やかし、自由さを縛りはしなかった。
灰宮社を継がない恋では、結婚する意味などなかった。
そもそも宗次郎は真面目で優秀な愛がお気に入りで、可愛い一人娘を身勝手な恋になどやりたくないはずだった。
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CINDERELLA STORY