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次の朝、舞良はいつも目覚めさせてくれる携帯がない為寝坊をしたが、誰にも怒られなかった。
舞良を目覚めさせたのは空腹と、喧嘩の声だった。
声の主の一人は清子でもう一人は双子のどちらかだった。
双子は喋り方こそ違えど、声は全く同じだった。
そもそも双子と清子は仲が良いのでこんな喧嘩の声など珍し過ぎて、どっちが怒鳴っているかなど検討もつかなかった。
珍しいが、舞良がそこで起き上がったって喧嘩の内容が分かる訳でもないし、無駄な体力を使うまいと、舞良はバスタブの中で丸くなったまま二度寝をした。
次に目を覚ましたのは正午過ぎで、あまりに長い時間丸くなっていたので全身が凝り、痛くなって舞良は起き上がった。
バスタブから出て伸びをすると、少し目眩がした。
顔を洗ってから眼鏡をかけて鏡を見た。
洗面台の鏡は五年前朱里が家に来て愛の部屋に消えた時、殴り割ったままで、右端からヒビが入って蜘蛛の巣の様に全体に広がっていた。
ヒビに邪魔されない一角で自分の顔を覗くと、一昨日の朝に比べてやつれているような気がした。
毎日見ている自分の顔なので、気のせいかもしれない。
舞良は鏡で自分を見たついでに上のシャツを脱いで、一昨日テーブルにぶつけた痣の経過を見た。
紫色に変色した痣は多少色が薄くなったくらいの変化しか見られなかった。
直ぐに痣が出来るし治りにくいのは昔からだった。
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CINDERELLA STORY