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▼創作三国志de ×玄徳 or →玄徳

2016/12/16 07:46 未分類(0)
風景に溶けた人へ10のお題

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● 雨の中、濡れる事を気にせず佇む人。


あれはいつの事だったかな。気付けば数ヶ月数年数十年、時間なんてものは走る馬より早く過ぎているから辟易する。だのに目玉に焼き付いた光景、瞼塞げばまざまざ浮かぶ。いつだったかといえば故郷の楼桑村を出てそんなに経っちゃいない義勇軍時代なのは確か。

安っぽい艶もない甲冑に身を包んでいたけれど、眼だけはぎらぎら滾って天を見据えていた我らが頭領、紛れもない劉玄徳の後ろ姿だ。しとどに濡れていた。雨だ。玄徳気に入りの生地は村の娘達が競って織ったと言う、それなりにあでやかな仕立てだったはずだが濡れに濡れて黒ずんで見えた。そもそも連戦の汚れた赤みを吸い込んでいたからそれも含んでの事だろう。だから雨に流してしまいたかったのか。こちらに背を向けて立つ玄徳はぴくりともしない。基本、俺は玄徳の行動にあれやこれやと口を出すようなことはない。だがこのまま放っておくには忍び寄る夜の気配、寒い暗いだけでなく野ざらし骸の血臭に野盗野犬の類も寄ってくる。
「玄徳」

呼んだ。早くも遅くもなく振り返る、白い顔。激しい剣戟を交わした戦陣に沸くような興奮も、殺しに殺され散った人命を儚む哀愁も、何も浮かんではいないかお。

「憲和」

呼び返される。動く、唇は赤い。雨に打たれていた割りに体温が下がっていない様子は、双剣を振るっていた血潮の滾りが未だ治まらない故か。俺は掌を天に向けて五指を軽く曲げ、伸ばし、曲げ。招きに応じて玄徳がこちらに寄ってくる。足どりにふらつく動きはない。あと一歩で隣に並び立とうとした玄徳の首に片腕を回し引きずるようにして幕舎まで連れて行く。自分で歩けるだとか何を心配しているんだお前らしくもないなだとか可愛くない口を叩く玄徳はしかし振りほどこうとはせずに引きずられるがままだ。

ぼけっとつっ立って部下の労いもしねえ大将が見限られてもおかしくねえぞと最もらしいことを嘯いて、連れて行く。

俺達の頭領だ。昔っからの俺の友だ。こいつが青い天蓋の下を歩く様になったとしても何ひとつ変わりゃしねえ。血の匂い、死の気配にもこいつを連れて行かせはしない。




● 石の上に肘を付いて祈りを捧げる人。
● 慣れた道を一緒に歩いてくれる人。
● 月光を浴びるように見上げる人。
● シーツに包まって手招きする人。
● 艶やかな赤を身に纏って翻る人。
● 木洩れ日の下で転寝している人。
● 澄んだ蒼い空を背にして笑う人。
● 乾いた土を踏みしめて進む人。
● 過去の情景、記憶の中の人。 







▼趙玄D前でも後ろでも良いから進む

2014/09/10 20:34 創作三国志(0)
簡雍が視線を寄越してくるのに、劉備は片眉を上げて応えてみせる。
何を思って劉備がそう、したのか。明確な言葉で説明が出来るかと言えばそうではない。理由を見出すより感覚で先に行動に出る悪癖が、劉備にはままある。幼い頃からそれで母親にもよく拳骨を貰ったものだ。
この場の誰よりも劉備との付き合いが長い簡雍はそれをよく知っている。だが簡雍は劉備自身で判っていない挙動の理由を、恐らく理解している。それを本人にましてや他の者に教えてやる親切な男でもないが、劉備の邪魔になるようなものを整理し、いなし、上手いこと地慣らしをする。
橋渡しというほど優しいものではなく、暗躍というほど大層なものでもなく。ただ簡雍の存在がなければ、関羽張飛の二人とて“劉備の陣営”にこうまで馴染めなかっただろうと言える存在だ。
劉備の趙雲に対する仕打ちにざわつく面子に、簡雍は手をひらひらと振って漂いかけた重い空気を散らしてみせた。

「今生の別れでなし。当の玄徳も子竜も落ち着いてんのに、お前らはなぁにをそんないきり立ってんだ」

張飛が勢い良く簡雍の方を向き、それから劉備を見て、趙雲を見る。その動きに関羽も何かを察したらしく、棘を帯びた目の光がほんの少し和らいだようだった。
今度はその関羽が劉備を見る。僅かにも迷うことなくずしりと感じるような視線にも関わらず、劉備は肩を竦めて笑って受け止めた。ひとつ頷き、劉備は改めて
趙雲に向き直った。

「子竜。賛兄の陣中、本当に世話になった。俺の将兵らと友誼を深めてくれた事に礼を言う。いつかの折にはきっとまた会えるだろう。その日までお別れだ」

曲がりなりにも自分の軍を持ち、その頂点を率いる劉備が深く、頭を下げて礼を尽くす。
対する趙雲は口許に穏やかな弧を描き、ほほ笑んだまま劉備以上に深く深く頭を下げて地に額をつけた。
言葉のない、返礼。そして静かに立ち上がって新たに一礼。歩きだした趙雲が向かうのは公孫賛に与えられた本来の幕舎だろう。その背は劉備達を振り返る事はなかった。



◆◆◆



なんとなく形にできそう
…………かな?かな?






▼趙玄C着地さえ出来ればいいなと

2013/08/10 12:22 創作三国志(0)
「まった、待てよ大哥、そいつは」

まず異議申し立てをするなら張飛だろうと思っていた劉備の予想は裏切られず、立ち上がった張飛が劉備に詰め寄ろうとするのを簡雍が軽くいなした。

「お前こそ待ちなぁ。玄徳が話してる途中だろ、阿飛」

張飛を小童扱いするのは命知らずな事だが簡雍ならばこそ。最近劉備軍に加わった廖淳も軽く頷いて援護する。関羽が黙っているのは劉備の次の言葉を待っているからだ。我を通すことも多々ある関羽だが、劉備のやること為すこと一先ずは呑み込もうとする。関羽がそれを是とするか否かは別として。

「何も変な話じゃないだろう、翼徳。俺達は賛兄の陣を去る。子竜は賛兄の部下でここに残る。何かおかしい事でもあるか」

ん?と劉備がへらりと笑って張飛の返事を促すと、張飛はぐうぅと唸って座り込んでしまう。だってそんな、何がおかしいって、大哥がおかしいんじゃないか。そんな声が下から劉備を見上げる張飛の眼からありありと伝わってきて劉備は苦笑する。まぁなぁ、そう思うのも無理はないだろうなぁと。
趙雲はどうみても自分の身の置き所をここと決めて、劉備の元へ通っていた。きょうだいである関羽や張飛は勿論、劉備を慕う陣営の連中にも認めてもらいながら礼儀を通して来ていた。
何より劉備自身が側にいることを良しとした。まずそうでなければ趙雲がどんなに足繁く通おうとも、関・張の2人が出るまでもなく門前払いだ。
才能豊かな若者が命を懸けて劉備を慕うのは心強く頼もしい。まして劉備が気に入ったなら尚更のこと。
そして趙雲本来の主である公孫賛がそれを許していたのは、劉備と公孫賛の間で算段が着いているのだろうと張飛を含めて劉備軍のほとんどがそう思っていたはずだ。関羽ですら、劉備が趙雲に振り下ろした別れの言葉に一瞬とはいえ眼を見開いたのだから。
聞いた最初は驚いたものの、簡雍は少しの間を置いて頭をかき、やれやれと頷いていた。



◆◆◆



先など考えていない!
オリジナルもやっぱり楽しい。






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