「深海魚の〜」「仄暗き〜」の後の話で、凌遊初エッチの話になります。
3度目のデュエルの後で二人は?



ASCENT1


 一度目に『日常』が変わった
 二度目に『自分』が変わった
 三度目には・・・?


 「勝ちたかった」そう遊馬は認めた。
 それは凌牙のためではなく、自分自身のために戦ったのだという告白。
 3度目のデュエルで、もし遊馬が『凌牙のために』戦っていると言ったのなら、こんなにも心は揺れなかったのだろう。
 最初からそうなのだ。
 自覚していなかっただけで、九十九遊馬という人間は、誰かのために戦いながら、それは全て自分の意思でしかない。
 だから、凌牙のために戦いながらも、その結果凌牙が遊馬の仲間として振舞わなくても一向に構わない。
 真実は自分自身のためであったとしても、人は自らの行いに報酬を求めるものだ。
 なのに、自分がそうしたいからしただけだという遊馬には、感謝の言葉すら必要ないのだと思えた。全ての行いが自分のためだと言い切るのなら、身を捨てつくす行為の全てが、惜しみなく与えるだけのものになる。


 身勝手に与えられる熱と光は、太陽に似ている。

 濡れて震える身体を暖め乾かし、そして今、渇かせる。


 3度目のデュエルの後、凌牙は学校へ通うようになった。
 つまらない授業など時折サボる事はあるが、おおむね単位が足りる程度には授業にでている。
 とげとげしい雰囲気の消えた凌牙に話しかける人間もそれなりにいて、不良たちとは違う人間関係がクラスにできはじめていた。
 ただ、何故自分がまともに学校に通うのか突き詰めて考えれば、『そこに九十九遊馬がいるから』という認めがたい答えに行き当たる気がしてならない。
 神代凌牙という男は、本来答えを出さないままで状況を放置できる男ではない。
 校舎の片隅でグルグルと(無論授業をサボって)思案した結果、『自分がどうしようもなく九十九遊馬に惹かれている』のだという結論にたどり着いたのだ。
「っは!馬鹿げてる!」
 言葉と共に、こみ上げてきたのは怒りだ。
 自分は遊馬を傷つけてばかりいるのに、これ以上まだ、何かを彼から奪い取りたいのだ。
 彼の大事なものを奪い、彼の手を振り払い、彼の身体を傷つけ、なお伸ばすその手にすがった。
 情けなくて、醜い自分。
 本来なら、この借りを返さなければいけないのだ。
 彼に謝罪しなければいけないのだ。
 彼から奪った物を埋め合わせるために、凌牙にできる物を差し出さなければいけないのに。
「俺はまだ、アイツから奪おうとするのか・・・」
 無機質でいて、温かみのある色をした壁に背を預けたまま、凌牙はずるずると崩れ落ちた。
 抱えた膝に顔を押し当てると、布を抜けて湿った水の感触が足に伝わった。


 渇いているのに。


 こんなにも、渇いているのに。


 求める心は水を滴らせる。

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モブ(?)姦から始まる凌遊。
なんだろう、シャークさんは不幸なのがとても似合うので、普通にラブイチャ遊馬とくっつくよりこのつながりのほうがしっくりしてしまいます。
あとカイ遊後とかね。
ラブラブは他で描かれるだろうと思うので、当サイトはこの路線でいかせていただきます。
(111101)


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