仄暗き水の底から4



 遊馬の身体と心を占めるのは、目の前が白むほどの痛みでしかなかった。
 身体を割り開かれる痛みに、嫌でも意識がそこに集中する。
 涙で滲んだ視界には、腰を振る男のシルエットがうつる。
 性に目覚めたばかりの子供とは言え、自分が何をされているのかはわかる。

 男に、犯されている。

 本来排泄の器官であるはずの場所を、女の代用として使われ、蹂躙される事実は遊馬を打ちのめした。できる抵抗は何一つなく、いつこの責め苦が終わるのか、始まりも終わりも全て遊馬の自由にはならない。
「っく、ふぅっ・・・うっ・・・」
 陸王の手によって大きく足を開かされ、膝を胸に押し付けるような体勢をとらされて、胸と腹が圧迫され深い呼吸はできない。
 浅く早く、打ちつける腰の動きに合わせて息が吐き出される。
 ビリビリと裂かれるような痛みはいつの間にか去り、残されたのはしびれるように続く痛み。
「くっ・・・んっ・・・うっぁ・・・」
 律動にあわせて漏れる鼻にかかったような高い声に、陸王はくつくつと笑った。
 決して快楽の色の混ざる声ではない。けれど、生意気な子供を屈服させる愉しさとしては十分すぎる。
「女じゃなくてよかったなぁ?子供ができる心配ねぇもんな?」
 痛みばかり追いかける意識に、毒のように吐き出された陸王の言葉がじわりと広がる。
 その意味を理解すると、乾きかけた遊馬の頬に再び涙が伝う。
「いや、だぁ・・・」
 強姦というだけでも打ちのめされていた遊馬の精神に、とどめを刺す言葉だった。
 震えはいつしか嗚咽に変わり、陸王のもたらす律動にただ揺さぶられるだけになった。男がひときわ激しく腰を揺さぶり息を詰めて静止すると、体の奥に精液を注がれているのだと解った。
「うぅ・・・ふぐっ・・・」
 他人の体液を注ぎ込まれるなど、嫌悪感しか感じない。
 腹を内側から圧迫していた男の物が出て行くと、かき出された体液が汗ばんだ肌を伝って鳥肌が立つ。
 それでも、これで終わったのだと思った。
 ただ、終わりだけと強く願って目を閉じていた遊馬には、体の上で交わされる兄弟の目配せも短い言葉のやりとりも聞こえていなかったのだ。
 ぐるりと世界が回り、ソファの上で反転させられる。いつの間にか自由になっていた両手を痛んでひび割れた革について体を支えて状況を把握したときには、不安定なソファの上で腹ばいになり、膝を立てて尻を突き出すような体勢を取らされていた。
「なっ・・・んぐっ!!」
 声を上げようとした口をふさがれる。
 口内を押し広げる弾力のあるものが何なのか理解すると遊馬の目がこぼれるほどに見開かれた。
「噛むなよ、噛んだらお前のを握りつぶしてやるからな。」
 背後から陸王の声がした。
 この男なら、言ったことはやるのかもしれない。
 恐怖と嫌悪のせめぎ会う中、せめて口の中から押し出そうと口の奥をすぼめ、舌で弾力のある先端を押した。
「ああ、それイイな・・・」
 暖かい口内に包まれて、先端をきつく締め付けられ、かすれた声で海王は呟いた。
 遊馬の口を犯すのは海王の完全に勃起した雄の性器そのものだった。半分ほど口の中に突き入れられ、血管の浮く残りの部分と、黒く陰毛に縁取られた根元、そして腹が遊馬の視界を埋めた。
 頭を振って逃れようにも、両手で抱え込まれかなわない。
「ふっ!!ぐぅ!!!」
 眼前のものに意識を向けている間に、再び体を割り開き、男の物が背後から突き入れられた。
 口をふさがれて、叫びはうめきに変わる。
 前後から男たちに貫かれて、遊馬の自由は完全に奪われた。 
「んっ!!!んぐっ!!!!」
 頭を抑えた状態で海王が腰を揺さぶると、喉の奥が刺激され、みぞおちからせり上がる嘔吐の衝動が遊馬の目から更に涙をあふれさせた。
 同時に、腰を掴んで後ろから揺さぶられ、びりびりとした痺れが背筋を駆け上がる。
 苦痛でしかない時間を耐えるように、遊馬はソファに爪を立てた。
 皮膚のようにやわらかく、遊馬の爪を受け止め、しかし痛みを感じる事もない弾力は、緩やかに遊馬の精神を追い詰める。

 どんな苦しみにも終わりは来るのだという希望、それだけが遊馬の心を支えた。



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モブ姦は好きですが、遊馬が感じないと決めたあたりで長くはならないという、本能に忠実な出来上がりでした。
(110908)


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