仄暗き水の底から3


「いやだぁ!!やめろやめろやめろぉ!!!」
 最早自由になるのは口しかなく、遊馬は声の限り叫んだ。
 しかし程なく陸王の大きな手のひらに口を塞がれ、叫びはくぐもったうめきに変わる。
「煩せえな、そんなにギャラリー呼びたいのか?」
 低く、嘲るように言われて、遊馬はビクリと震えた。
 ここは、遊馬にとって一人の味方もいない場所なのだ。
 脳裏をシャークの横顔がよぎる。彼に助けを求める?
 こんな姿を一番見られたくないのは彼だった。
 諦める?抵抗を?
 力を失った遊馬がカタカタと震えるのを満足げに見て、陸王は口を押さえていた手を放した。
「いやだ・・・いやだ・・・」
 遊馬の口から零れる声は、呟きに近い。

 諦めたら、人の心は死ぬのだ。

 それは以前遊馬が凌牙に言った言葉。
 今、遊馬は死に瀕した心を抱え、最後の抵抗の言葉をつむぎ続ける事しかできなかった。
 ようやく抵抗の弱まった遊馬に気を取り直し、陸王は遊馬の後孔をさぐる。力なくうなだれた幼い雄の証をかすめ、身体のラインに沿って手を這わせれば、そこはすぐに見つかった。
 女と違って濡れることのない穴は指の侵入すら拒む。
 ぐいと力を込めて押せば、ヒッと息を吸うような声が上がった。
 男ならば、女のモノでも乾いた所に突き入れようとすれば自分もかなりの痛みを伴うと知っている。
 何か滑りになるものと思案して、ポケットから軟膏のチューブを取り出した。
「傷薬だって言っていたからな。」
 小競り合いに生傷はつき物だ。
 先に塗っておいてやるよ、と笑う陸王を見上げ、遊馬の目が見開かれる。
 遊馬の片足を胸につくほどに折り、片手で起用にキャップを外すと、軟膏の口を遊馬の後孔へ突き入れる。
「ヒィっやっぁあ!!!」
 高い悲鳴が上がるのを聞きながら、チューブを握り中身を搾り出す。中へ注ぎきれなかった軟膏があふれ出すのを、丁度いいと陸王は思った。
 空のチューブを放り、あふれ出した軟膏を塗り広げてから、節くれだった太い指を遊馬の中に突き入れた。
「いったぃ!・・・い、やだぁ!!」
 背を反らせ、上に逃れようとするが、海王に阻まれてそれもできない。
 ずぶずぶと埋め込まれる指は、軟膏の滑りのせいか、鈍痛を伴うものの痛み自体は耐えられないものではなかった。しかし、埋め込まれた指がぐりぐりと腸壁を押しながら動き回るのは恐怖以外の何者でもない。
「・・・っう、ひぃっく、うぅぅ・・・」
「あらら、泣いちゃった。」
 きつく噛んだ唇からは嗚咽が漏れ、瞳からは大粒の涙が溢れる。 
 脅しとしては十分だろうと、海王は兄の表情を窺うが、今にも獲物に食らいつこうとする肉食獣の顔に、腕を押さえつける手に力を入れなおした。
 兄と二人、不思議なカードを手に入れてから、世界が変わった。
 自らの欲望を抑える必要がないことを、知ってしまったのだ。
 求めるものは奪えばいい、それだけの力を与えられたのだ。
 兄がこの子供を犯したいと思うのなら、それはもう変えられない未来のこと。
 ぐりぐりと内部に軟膏を塗りつけるように遊馬の体内をかき回した陸王は、最後に余った軟膏を自身の性器へ塗りたくった。
 細い腰を抱え上げ、凶器にしかならないものを、薄明かりにてらてらと光る穴にあてがう。
 そこで遊馬の顔を見下ろせば、涙にぐしゃぐしゃに汚れた顔で陸王を見上げていた。
 なまじ心が強いからこそ目をそらせないのだろう。見開いた瞳は浮かぶ水にゆらゆらと揺れている。縁からあふれ出した雫は頬に流れ、薄く開いた唇は微かに震えている。
 間違いなく自分を見詰める瞳に、背筋にぞくりとするものが走る。
 女を抱く時にこんな気持ちは味わえまい。
 たまんねぇな。
 陸王は心の中で呟いた。
 征服し、踏みにじる、暗い喜びを感じながら陸王は遊馬の身体を貫いた。
「ヒィッアァッ・・・ァァァアア!!」
 悲鳴は、まさに痛みからくるもの。
「・・・っ、狭めぇな・・・」
 突き入れたものを引き抜きながら、ぎちぎちと締め付ける狭い穴と、飲み込まれた自分の一部を見下ろせば、そこに絡みつく赤い色が見えた。
 無理な挿入に、どこかが切れて出血したのだろう。
 処女を失う女のようだ。
「クックッ・・・これでひとつ大人になったなぁ、クソジャリ。」
 陸王の吐く嘲りの言葉は、引き裂かれる痛みに翻弄される遊馬の耳には、届かなかった。

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ゲーセンで兄弟がいた部屋を思い浮かべて書いたけど、アニメ見直してみたら吹き抜けの2階だったwwwもうあの部屋と別の3Fにあるゲーセンスタッフルームということにします!←開き直った
(110703)


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