流星群の夜に 4


 早く何か回答をくれないと、心臓が止まりそうだと遊馬は思った。
 我ながら大胆なことをしてしまったと今更ながらに半分後悔しながら、遊星の答えを待った。
 とても長い時間のように思えたが、もしかしたら数瞬の事だったのかもしれない。
 遊馬の肩を軽く押しのけ、遊星は床に滑り落ちたバスタオルを拾うと、遊馬の体をくるりと包んだ。
「遊馬、焦らなくていい。俺は、遊馬がもう少し大人になるのを待ってるから・・・」
 遊星はそう言って優しく笑った。
 遠まわしな拒絶。
 いや、いたわり?子ども扱い?
 顔が火照るほどにあがっていた血液が、すっと下がるのを感じた。
 その横に、対等に並びたてるほどの実力も年齢も足りないのだとは痛いほどわかっている。
 でも、今日は引けない。
「ま・・・待たなくて、いい!」
「遊馬?」
「俺、すげーエッチなこと考えちゃうんだ・・・遊星さんに、さ、触って欲しくて、俺・・・」
 まるで、駄々をこねる子供のようだ。
 遊馬は自分でもそう思った。
 けれど、欲しくて、欲しくて欲しくて。
「途中で止めてくれと言っても、俺は止まらないぜ?」
 遊星の言葉に伏せていた目を上げると、遊馬とデュエルで相対した時にも見せたことのない、深く、鋭い瞳が遊馬を捕らえた。
 遊星はまっすぐに遊馬を見ていた。
 無意識に、びくりと体が揺れる。
 狩られる獲物になったような気分だった。
 未知なものへの恐怖が遊馬をすくませた。
 胸元の鍵を探ろうとして、脱衣かごの中にそのまま置いてきたのだと思い出した。今まで遊馬の支えとなってくれた鍵だったが、今日は自分一人の想いだけをもって遊星の前に立とうと思ったのだ。
 かっとビングだぜ、俺!
 心の中で現状に似つかわしくない気合を入れて、遊馬は
「俺が止めてって言っても、止めないで下さい。」
 精一杯の勇気でそう言った。
 次の瞬間、遊星は遊馬を抱えて立ち上がった。
 遊馬が驚きの声を上げる間もなく、部屋を横切ると階段を上る。
 3階は遊星のベッドルームになっているのだと聞いたのを思い出し、遊馬の鼓動がまた早くなる。
 ベッドルームは、オレンジ色の間接照明が照らしていた。目を刺激しない程度の明るさは、部屋のあちこちに深い影を落としていたが、それでもすべてを暴き出すほどの明るさがある。
 遊馬をタオルごとベッドに横たえ、遊星は簡易デスクの引き出しからなにやら、軟膏やクリームを入れる小さな容器を手に戻ってきた。
 不思議そうに見上げる遊馬に「滑りをよくしないと痛いだろ?」そう言われ顔が火照る。そのクリームか軟膏をどこに使うのか想像してしまったのだ。
 ベッドの中ではどう振舞えばいいのか、遊馬には全くわからず、ただ戸惑うばかりだ。
 上に着ていたものをアンダーシャツまで脱ぎ捨てた遊星の、細いけれど筋肉質な体が、照明に深い陰影を刻んで浮かび上がる。
 ところどころ、傷跡があるのは、彼のたどった道筋が平坦でなかった表れ。
 傷だらけの体を、遊馬は素直に、美しいと思った。
 遊馬の体に遊星の素肌が重なる。
 むき出しの肌は暖かくてそれでいて二人の間にある薄い空気の存在を感じる気がして、どこか物足りなかった。
 軽く唇を合わせたあとに、唇の端を舐められると、いかに鈍い遊馬でも何を求められているのか解り、うっすらと唇を開いた。歯列をたどる舌がするりと咥内に忍び込み、やわらかく薄い遊馬の舌に絡まる。
「んっ・・・は、ぁ・・・」
 口付けには答えるものと情報では仕入れていたから、遊馬は懸命に舌を差し出して遊星の動きを追った。
 大きく開いた口から、交じり合った唾液が遊馬の頬を伝い落ちる。
 唇が離れていく頃には、うまくいかなかった呼吸のために、半分酸欠だった。
 塗れて光る遊星の唇が遊馬の目を捕らえて放さない。
 体の奥がざわつくのを感じて、自分は間違いなく遊星に対して欲情しているのだと理解した。

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気合を入れるときにはかっとビングです。
ええ、いつでも。しかしこんなシーンでかっとビングされると笑ってしまうwww
真剣なはずのシーンを書きながら転げまわってもだえてしまいました。恐るべし遊戯王。
そのうちデュエルしようぜ!の勢いでセックスしようぜ!と言い出しそうで・・・ハラハラ。
(110619)


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