「変って書いて恋って読むことってあんのかねえ。」

ああ、なんて平和なんだろうか。空は青く澄み渡りぷかぷか、といったら語弊があるのでふわふわ、にしとこう、ともかく白い雲が所々に浮かんでいる。春島が近い、小春日和な昼下がり―デッキで寝転がり本を開きながらトロピカルジュースを可愛くストローで飲んでいるシャチは藪から棒にそんなことを呟いた。隣で武器を手入れしているペンギンは顔をあげて訝しげに彼を見る。

「変は変だろ。」
「いやだってさ、身近にいるじゃん。」
「………あれはただの変態だ。」

いやはや考えたくもない、というよりキャプテンが不憫でならないかわいそうに。最近入ってきた新しい船員はとっても可愛い女の子。最初は皆、彼女の可愛いらしい容姿におーっと鼻の穴を拡げたものだが蓋をあけたらただのドがつく変態娘だったので今となっては女扱いされていない。しかもロー曰く勝手についてきた、のだそう。いや、本当に変態で、ローはしっかり睡眠をとれているのだろうかとクルーは皆心配していた。

「お、シャチにペンギンじゃないですか、ちょうど良かったロー見なかった?」
「げ。」
「げ、とはなんですかシャチくん。さては可愛い****ちゃんのお出ましに今興奮しているのですね、いやあ残念だ、私の身体はローのものだと決まっているのですよそう、骨の髄まで!」
「(無視)キャプテン朝から見てねえな。」
「(無視)一番船に詳しいからどこかで寝てるんじゃないか?」

勝手に盛り上がる****を無視して話をしてみるも、ちょっとなんで無視するのよ!と怒ったような声が聞こえてきたのでおめーが変態だからだよと二人口を揃えて突っ込めばいやあそれほどでもなんて赤くなりやがるなんとまあポジティブシンキングな少女に、ぐわんぐわんと頭が揺れるような感覚が二人を襲う。

「で、ローはどこに行ったのかしら。」
「自分で探せよー。」
「同感だな、俺らを巻き込むな。」
「だってさー、昨日の夜せっかく忍び込んで悪戯したのになんでいないんだろう、二人にも見てほしかったなあ。」

悪戯だと?

ああ神様仏様海賊王様!!僕らは何もしていませんからどうかお命だけはお助けください!!つーか馬鹿かてめー!キャプテンにい、いたずらなんて俺ならまず身体ばらばらだぞこんちくしょう!!
シャチ落ち着け、まずいぞ心臓がばくばく言ってきた。いやまて、なにをしたんだ一体さあ怒らないから言ってみろ。

「本当は服も着替えて欲しかったのに、朝起きたらいないんだもんなー、でも、綺麗だったなあ化粧したロー。ぷくく、あの顔で、好きだ****とか言われたいあーんそんなのダメダメ百合っちゃうきゃあ〜!!!」

いやんいやんと首をふりながら悶える****は完全に変態だ、うん変態以上だ。つまりきっと、ローが寝ている間に女の子メイクを施し、起きたら女の子の服を着てもらおうとしたんだそうに違いない。キャプテンなんてかわいそうに、こんな変態に恋されたのが運のツキ!いや待てよ恋なのか?こいつは恋してんのか??ますますわからん、と顔を青くしながら口から泡を吹いているシャチの背中を同じように顔を青くしてさすっているペンギン。もはやこの二人もかわいそうだ。すると****の背後に不穏なオーラが近付いてきて小さな頭をがっしりと掴んだ超不機嫌な怒りMAX、トラファルガー・ローが「てめえ、ちょっと来い」と****の頭をつかんだままでずるずる引きずっていく。嵐が去って本当に良かったあわよくばあの変態海に落としてしまってくださいキャプテン、と、二人は心から願ってみた。

「変は恋と…?」
「…やっぱり別物だ。」


ぼすっと自室のベッドに****を放り投げるとボキボキと指を鳴らして目の前に仁王立ちするローは黙っていれば文句なしの美少女を見下ろした。

「さて、どう落とし前つけてやろうか。」
「え?どうゴムつけてやろうか?やだ、ローったらまだ昼間じゃん、で、でもローは明るいほうが好きだもんね、今日は変わったゴムの付け方でもす「RO「ごめんなさいもうしません。」

ああ、本当に怒ってる、どうしよう。と、ちらりと上目遣いでローを見上げると、あ、やっぱり不機嫌、と慌てて下を向く****。そんな彼女の様子をふん、と鼻で笑い、ローはにやりと口元を緩めた。

「なあ****、一個いいこと教えてやろうか?」
「え?」

顔を上げた瞬間塞がれた唇。んん、とローの胸を押し遣っても力でかなうわけがなく、後頭部をがっしり掴まれ、ぬるり、と舌が侵入してくる口付けに、****はああそうだこの人は本物の鬼畜ドS変態だった、と、後悔したのは後の祭り。神様仏様海賊王様、彼が今まで手加減してくださっていたことは、よーくわかりましたから。

断末魔の悲鳴が聞こえた翌日、ローはすっきりした顔でご機嫌にキッチンに現れたものの、****は首元やら太股にたくさんの紅い花をつけげっそりした顔で、腰を押さえながら現れたらしい。

ああ、全ては後の祭り。




変と恋の違い


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