デッキで真剣に本を読んでいる****を見つけ、ローは背後から音を立てないように近寄る。ちらっと見えたのは『どくりんご』の文字。
「!!!やだ、ローってばびっくりするじゃない…」
はー、と胸を片手で押さえ頬を染める****が可愛くてたまらないがその気持ちをぐっと押し込みローは平然を装い、ふっと鼻で笑った。
「珍しいな、お前が本読むのは。」
「あ、これすごく面白いんだよ。」
ローも読む?なんて可愛らしく差し出され、受け取ればそれは童話。真剣になにを読んでいるかと思えば童話とは。****らしいといえばらしいが、今頃になって白雪姫なんてどこで見つけたのかそちらのほうが気になる。
「白雪姫か。」
「私、昔一度だけ白雪姫を読んだことがあるよ。」
昔一度だけ読んだ白雪姫。童話の中の彼女は愛されず、捨てられて可哀想だと感じたのと同時に強い憧れを抱いた。奴隷として刻印をつけられ、様々な扱いをされた自分と少し似て非なる。
―いつか、私にも王子様が現れてここから連れ出してくれる…
あの頃はそんなことを毎日何百回も思っていた気がする。
「おい、****。」
ローの呼び掛けにはっとし、****は彼をじっと見つめた。俺様ではあるが、本当は優しいロー。憧れだった白雪姫よりも今は自分の方が幸せだと断言してもいい。
「ロー、私を連れ出してくれてありがとう。」
****が笑ってそう言えばローはニヤリと笑い、彼女の頭をぽんと撫でる。
「代わりに離す気はねぇがな。」
「…うん!」
自分に抱き付き幸せそうな笑みを浮かべる****は今まで出逢ったどの女性よりも綺麗で可愛いと、ローは思う。そのまま彼女の額にキスを落とし、柔らかな髪に指を絡めて耳元で囁いた。
「童話の中の姫より幸せにしてやるよ。」
(貴方に出逢った時から私の世界は180度変わった。)
白雪姫に憧れて
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