先日、あのひとに愛の告白をされた。
陳腐な台詞で、安物の笑顔と共に。あの人――ギルデロイ・ロックハート――はイギリス魔法界ではちょっとした有名人。ホグワーツに来てからもその人気は衰えず、しかし生徒の間ではじわりじわりと不信感が見え隠れしていた。
「スネイプ教授はロックハート教授のことをどうお考えですか?」
「あんなやつのことは考えたくもない」
私だって考えたくない。それでもついつい過ってしまうのだ。大鍋かき混ぜていても、スネイプ教授と話していても。付き纏われる。
「苦手なんですね。彼が赴任してくる前から予想はしてましたけど」
スネイプ教授は大鍋から立ち上る白銀の湯気に満足し、柄杓を私へ譲った。煎じた魔法薬を小瓶へと移して、私は木箱へと詰めていく。
「近頃は彼を訝しむ者も多い。ろくに呪文も扱えない詐欺師ではないのかと」
「確かに彼の授業は酷いと聞きます」
「恋人の悪い噂を聞くのは耐えられんかね?」
「恋人?」
その言葉に手が止まる。新たな材料を刻んでいた彼も小刀を置き、私へと視線を向けた。
「やつがそう吹聴している」
「愛しているとは言われましたが、それだけです。私からは何も」
「だろうな。彼にハッキリ言っておけ。断るのだろう?」
まるでそうするのが当たり前かのように彼は言った。私の心を知っているのかも、と思わせる口ぶり。私が愛の告白をされたい相手はただ一人。
彼の問いに答えは決まっているも同然。
「イエス」
Special Thanks
you
(2019.3.4)