私を見てなんて言えない


私を見てなんて言えない。

瞳を通してこの邪な思いを彼に読まれてしまったら。私はそばに置いてもらえないだろう。それにもう、あなたの黒い瞳に私は住んでいる。単なる同志という、揺るぎない場所に。ホグワーツの生徒や教職員と一緒になって、守るべきものという大きなカテゴリーに放り込まれている。


任務先でかち合ってしまった死喰い人との戦闘で、私の身体はボロボロ。だからそんな無駄なことを考えてしまうに違いない。治療薬を持って騎士団本部へ駆けつけたセブルスの姿を、見てしまったせい。

もう彼の心を追うのは止める、と一体何度誓えばいいのだろう。


「まずはハナハッカだ。骨生え薬はその後。患部を見せろ」


前に立つ彼が、小瓶片手に顔をしかめた。私のローブはあちこちが切り裂かれ、血が滲んでいる。顔も、腕も、胸や、折れた足も。


「セブルス!彼女は女性なのですよ!あなたに――」

「いいの、モリー。あなたは他で手一杯でしょう?自分じゃ上手く処置できそうにないし、セブルスがしてくれるならお願いしたいわ」


彼と私は同志で、友人で、ただの患者と看護人。肌を見せることに何の感情も湧いてこない。ただ治療するだけ。そう思い込むことにした。

納得いかない表情のモリーは、せめて、と他の男を伴い部屋を出ていった。私が服に手をかけても、目の前に居座る彼は顔色一つ変えやしない。


「申し訳ないけど、脱ぐのを手伝ってくれない?服を切ったって良いわ」


強く打った肩に身体が悲鳴を上げた。モリーによって多少の痛みは引いているものの、どうしても動きは制限される。流石に渋々といった様子で、セブルスが杖を取り出した。


「切るぞ」

「ええ、お願い」


その手付きは想像以上に慎重だった。私の肌に触れないよう服を浮かせて、その上を杖が滑る。下着が露になると、彼は眉を潜めた。

その漆黒の瞳には傷だけが映る。


「よもや盾の呪文を知らずに騎士団に参加しているのではなかろうな」


ハナハッカの清涼感が辺りに漂って、ポトリと肌へエキスが染み込んだ。ヒリヒリとした治癒の痛みに呻きながら、強がる私は会話を続ける。


「やつらが卑怯な手を使ってくるからよ」

「正々堂々を望めるような相手ではない。君も手段は選ぶな。迷いは命を脅かす」

「そうね。肝に銘じる」

「……君が無事で良かった」

「無事って言えるのか、怪しい状態ではあるけどね。でも生きてはいるわ」

「それが何より重要な任務だ」


ため息のように息を抜いた彼の眉尻はほんのりと下がり、まるで心底安心したかのように見えた。何度も勘違いをして、何度も後悔する。その刹那の表情に、彼をただの友人だと思い込む私の努力が、また、

泡となって消えた。

Special Thanks
you
(2019.2.27)


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