「白黒ハッキリさせましょう。
あなたと私、どちらがダンブルドアの右腕として相応しい人間か」
そうやってセブルスを引き止めるリリーに巻き込まれたのは、これで何度目だっただろう。もう両手では足りない気がする。
「決闘の立会人はリーマス」
「どうせグルなのだろう?今度はどんな策を練ってきた?」
「彼は誓って私たちを公平に扱うわ」
私が中立を守ったところで決着なんてつきやしないのに。適当な相槌だけでも話はどんどんと進んでいく。杖を構える二人から距離を取り、適当な場所に腰掛け膝に置いた腕で頬杖をつく。
「リーマス、合図を!」
「はいはい。――1、2、3!」
いつもの通り、今日も決着はつかずに終わった。挑むリリーも付き合うセブルスも、一体何がしたいのやら。進展させる気なんて更々ないのでは、と流石の私でも思う。こうやって定期的に杖を交えることでしか彼らはコミュニケーションを取れないのでは、と。
「そろそろ子供みたいに突っ掛かるのは止めたらどうだい?」
去っていくセブルスの遠い背中を二人で見送りながら、少しからかうつもりでそう言った。
「あなたたちだって散々そうしてたクセに」
しかし返ってきたのは心を突く学生時代。
「あの時は――正真正銘の子供だった」
「あなたには止められない。彼らも、私も」
「君の気持ちは止めやしないよ。好きなんだろう?セブルスのことが」
遠くで彼が振り返った。まるで名前が聞こえたかのようなタイミング。すかさず隣でリリーが杖を振った。闇の魔術なんて馬鹿馬鹿しいくらいの簡単な呪い。セブルスは勿論簡単に防いでしまう。そして返された白い閃光。その矛先は、私――?
「珍しい。セブルスが的を外すなんて」
「いや、今のは……やっぱりミスかな」
立て続けにセブルスの杖から出た煙幕に姿が消えて、リリーはようやく杖から手を離した。はぁ、とため息混じりに患いを吐き出す。
「これでも、いつもリーマスを巻き込んで悪いとは思ってるのよ」
「君たちの関係こそ、白黒ハッキリさせればいいのに。気付かないのは本人くらいだよ」
彼も、彼女も。
眉尻を下げた彼女は固い意思を覗かせる瞳で微笑んだ。彼らは気付かない振りをしているだけなのかもしれない。そう過る。
「当たって砕ける気力があるほど私たちは若くないでしょ。だから、
そこは…グレーで」
Special Thanks
you
(2019.2.5)