私だって女の子ですよ?


「私だって女の子ですよ?」


不貞腐れたリリーが呟いた。俯き口先を尖らせて、後ろに組んだ腕の指先を弄る。石畳へ落とされた視線は上下へ揺らす靴先を見つめていた。


「だから何だ?グズグズしているとホグズミードへ行き損ねるぞ」

「セブ――」

「スネイプ先生、だ。君の親には世話になったが、ここではきちんとけじめを付けたまえ」


むっすりと機嫌を悪化させたリリーは動こうとはしなかった。スカートの襞を摘まんでは、重力に遊ばせる。欲しい言葉があるときに、決まって彼女はこの仕草をする。その癖はスネイプもよく理解していた。


「この服、似合ってませんか?」


リリーが上目使いにスネイプの様子を見つめた。不安を色濃く滲ませて、父親譲りのその目を何度も瞬かせる。


「今日は風も強い。その格好では寒いだろうな」

「そういうのじゃなくて!」

「私が似合っていると言えば、君は何でも着て出掛けるのか?」

「もういい!私だって女の子なのに!セブの意地悪!」


リリーの背中が見えなくなると、スネイプは大きなため息を溢した。

スネイプ先生だ、と訂正する間もなく、彼女は地下を飛び出した。恐らくそのままホグズミードへ行くのだろう。いつもより落ち着いた色合いの服を揺らし、彼女自身を引き立たせるシルエットを身に纏って。

服のことを知らずとも、彼女のことはよく知っている。それこそ生まれたときから、彼女に自我が芽生える前からそばにいた。あの服装が彼女にとてもよく合っていることは、分かる。

大人びたその格好は、いつまでも子供だと思っていた存在を打ち壊していった。再び落ちるため息と共に、弛んだ口からぼやきが飛び出す。


「『女の子』?はて、見当たらんな……」

Special Thanks
you
(2019.1.14)


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