普段通り。
それは生徒を寮へ押し込んだあとに開かれる一時のこと。グラスにお互いが用意したお酒を注いで、その味を語り合う。
「今日は私が用意する番でしたね」
「勿体振らずに早く出せ」
月明かりも届かない地下。リリーとスネイプは暖炉のゆれる炎を眺めて座り、お互いを隣に感じていた。薪のはぜる音に重なり紙袋がガサガサと笑う。
「奮発してシャンパンにしました」
「君の得意とする安くて旨いものはネタ切れか?」
「そんなことはありませんよ。ただ教授ばかりが所謂イイモノを知っているわけではないとお伝えしたくて」
リリーは杖を振ってグラスを適した形へ変える。そしてスネイプへ促すと、彼はグラスをボトルへと傾けた。独りでに浮き上がるボトルは美しい琥珀色の液体を注いでいく。気泡がいくつも弾け、秘めていた香りをちらつかせた。
「今日もお仕事お疲れさまでした」
「全くだ。グリフィンドールは落ち着くことを知らん」
コクリ、とスネイプの喉が上下する。それを見届けて、リリーもまたグラスへ口付けた。
「美味しいでしょう?」
「当然だな。大方ルシウスから聞いたのだろう」
「なぁんだ、バレバレじゃないですか。つまらないですね」
「君が分かり易すぎるだけだ」
「どうしてシャンパンにしたのかも?」
リリーは指先で遊ぶようにクルリとグラスを回す。そして一向に視線の合わないスネイプへ、身を乗り出した。覗き込んだ彼の表情にクスリと笑う。
「……見当はつく」
「盛大なパーティはお嫌いかと思いまして」
例えあなたが生まれた日でも、重ねていくのは
なにも変わらない、小さな日常。
Special Thanks
you
(2019.1.12)