チャームポイントは目だと思う。
母譲りの緑が私のお気に入り。睫毛だって他人よりボリュームがあって、自然なカールがとっても可愛い。上級生になれば化粧に興味を持つ子も増えるけど、私には必要ない。この目があれば、私は無敵。にっこり笑ってウインクひとつで大抵のものは叶ってしまう。
持って生まれたものを使うのは、そんなにいけないことだろうか。
恵まれていることは時に反感を買う。私の性格も相俟って、現状は最悪。わけの分からないネットリとしたピンクをかけられて、私は異臭を放っていた。
大抵は自分で何とか出来る。助けを求めるのは性に合わないし、私は頭もいい。それに自分一人で出来ない姿を犯人に見せてやるのは嫌だった。
でもどうにも出来ないときもある。
「――と言うわけで。お願いします、スネイプ先生」
「どう言うわけだかさっぱり分からんな」
私の肩に付着した物体を指で掬い、先生は心底嫌そうな顔をした。それでも自分の指先に何度か杖を振って消すことに成功すると、今度は私へ唱えてくれる。
「助かりました。医務室は遠いし、ここなら他人の目もありませんから」
「やり返せばいいだろう」
「教師の台詞じゃありませんね」
「君は、教師に見つかるようなへまはしない、と高く買っている」
君は、を強調してニヤリと口角を上げた先生は企みを成功させた悪役そのものだった。敢えて問い返しはしないけど、この悪戯の犯人の身に何かあったに違いない。
「面倒なんですよ。腕で勝っていても、数は不利です」
「腕には自信があるようだな」
「もちろんです」
真正面から先生を見て、胸を張った。先生も私と目を合わせ、フンと鼻を鳴らす。こんなにじっくりと先生を見たのは初めてかもしれない。
「もう用はないはずだろう、ミス・エバンズ」
「はい、先生。ありがとうございました」
先生のチャームポイントも目だと思う。黒は何にも染まらず自分を貫く色。あらゆるものを吸収してしまう。パッチリお目目ではないけれど、それが先生らしくていい。
そして心も。意地悪で嫌みばかりなその奥にある真面目な優しさ。
見えない部分ではあるけれど。
Special Thanks
you
(2019.1.11)