「わたしを殺してください」
最後の最後、奥の手は、これしかないと思った。
「祖父の屋敷で本を見つけました。『分霊箱』の研究を纏めた本です。そこには魂を引き裂いて保管する魔法が載っていました」
リリーは取り出した古めかしい本をスネイプに差し出した。唖然とした表情の彼が手をつけずにいると、代わりに彼女がページを捲る。簡潔な説明を加えていく彼女に、スネイプはただ黙って拳を握った。
「これが真実かは分かりません。けれど私はこれに命を賭けたい。それであなたが救われるのなら!」
「何が救いだ!君を犠牲に生き延びた命に何の意味がある?」
「私にとっては、あります!あなたが生きていることこそに意味がある!危険な立場に身を置き、それでも命の保証がされていることにも!」
「君を殺し引き裂かれた魂にもたらされる救いなどない!」
怒らせる覚悟はしていた。声を荒げ、震えるほど強く拳を握り、顔色を変えて。しかし不意に伸びてきた彼の腕に動けなくなったほど、彼はいつもの彼ではなかった。
「頼む、リリー。二度とそんなことを言わないでくれ……」
彼は身動ぎできないほど強く私を抱きしめて、そう乞うた。心の奥底から競り上がった懇願が、肩に埋められたセブルスの唇から零れて身体を響かせる。けれど心に張り付いて剥がれないのは、抱きしめる直前の彼の表情。
「ごめんなさい、セブルス。馬鹿なことを考えて」
彼が泣いたのを初めて見た。
Special Thanks
yu様
(2018.12.27)