世界中探せば居たかもしれなかった。
彼の代わりになるような人が。それでも「代わり」を探しているうちは見つけられっこないのだろう。あんなにも周りを惹き付ける人物なんてそうそういやしない。
「リリー……」
気付けばセブルスがすぐ後ろに立っていた。冷えきったベッドにすがる情けない姿を見せてしまったなんて。黙って去ってくれたらいいのに、気の利かない男。
「出てって、セブルス」
絹のような笑い声の印象的なリリーから出た唸る声。スネイプは一瞬判断を迷い、それでもこの場に留まった。グリモールド・プレイスのブラック邸、最上階にある抜け殻の部屋は、彼にとって居心地のいい場所ではないにも拘わらず。
「今の君を一人にはしておけない」
「いいえ、できるわ。あの日神秘部に向かわなかったあなたなら。あなたが加わっていれば、シリウスは死なずに済んだかもしれない!」
振り返り、セブルスの顔を見てしまったのがいけなかった。シリウスの詰まったこの部屋は彼へのすべてを増幅させる。会いたい、辛い、悲しい。そしてあの日ここにいなかった自分に対する怒り。共に戦えなかった苦しみ。
セブルスはただ役目を全うしたにすぎない。彼にしかできない重要な任務を今後も円滑に進めるため、神秘部へ行くわけにはいかなかった。頭では理解しているのに。
「ごめんなさい、まだ私――」
「気にする必要はない。人の死に感情が乱れてしまうのは正常な反応だ」
「セブルスも乱してくれる?例えば、私が死んだりしたら」
他のみんなとは違ってそっと一人にはさせてくれない意地悪なセブルス。優しいセブルス。
「さぁな。私の感情はとうに壊れてしまった」
そんなこと、あるはずがないのに。ハッフルパフ生の身に起きた悲劇も、シリウスのことも、続出している行方不明者のことにも、彼は心を砕いているはず。彼が泣くことはないのかもしれないけれど。
「シリウスとね、約束したの。お互いが死んでも決して泣いたりしないって」
「そんなもの、反故にしてしまえ」
「嫌よ。彼ったら、夢に出てきそうだもの」
だからお願い、セブルス。今だけは、
濡れた枕に気づかないフリをして。
Special Thanks
you
(2018.12.26)