「女の買い物は長い」
扉の向こうから声をかけられ、乗り気でない理由のひとつとしてそれを挙げた。
「そんな風に言えるほど、色んな女性と買い物をした経験がおありなんですか?意外ですね」
「ただの一般論だ」
何故か付き合わされたマクゴナガルやスプラウトの買い物は、確かにそうだった。それも丸1日かけて購入したのはひとつだけ。一番初めに見た店へわざわざ戻って購入した。
「買い物もしたいんですけど、何よりセブルスと街を歩くのが楽しみなんです」
遠慮がちに開いた扉から顔が覗く。色鮮やかなローブを纏いどこを取ってもきらびやかなリリーは、ホグワーツを練り歩く教師としての彼女とは違う姿。細く白い指が腕へと回され、上腕に彼女の熱を感じた。至近距離で見上げられれば、次の言葉が出てこなくなる。核心的な瞳が真っ直ぐ私を見つめていた。
「生徒は学校から出られないんです。絶好のデート日だとは思いませんか?」
「……夕食までには戻るぞ」
にんまりと笑みを浮かべる彼女に大きく息を吐き出した。
「あ!ついでにセブルスのローブを仕立てに行きましょう!最後に服を買ったのはいつです?私が言わないとご自分に時間もお金もかけようとしないんですから」
「私のものは結構だ」
「ダメです!良いですか、外見というのは――」
また始まった。彼女は人差し指をピンと立て、意味もなく振り回す。うんざりだと態度で示して見せても止まる様子はなかった。
「今日の予定は君の講演会に変更で良いな?」
「い、いえ、すぐに出発します!」
これに関しては私の分も兼ねていると言うのがリリーの言い分ではあるが、
彼女は話も長い。
Special Thanks
PUNI様
(2018.12.11)