言葉にしないでほしかった。
『少し太ったか?』
なんて。
「デリカシーがないにもほどがありますよ!」
防音の呪文が効いたセブルスの部屋で、リリーが吠えた。そんなことはない、と否定できなかった事実が余計に声を震わせる。
「悪いことだと決めつけていることが、そもそもの誤りだ。君の場合は少し増えたくらいがちょうど良い」
「過度に増えたらダメってことじゃないですか!愛想が尽きちゃうんでしょう?」
「馬鹿者。過度の肥満は身体に悪い、という話だ」
呆れたセブルスのため息も、今のリリーには届かなかった。
「そう言えばセブルス、私といることが増えてからふっくらしてきましたよね。まさか、私の生活は太る要素だらけ!?」
「それは……元が悪すぎただけだ。君といるようになって、ようやく人並みになった」
「確かに以前のあなたは自分自身に興味がないように見受けられました」
「それは今も変わらない。それでも、悲しむ君の顔は見たくないからな。もちろん、怒る顔も」
優しく微笑む彼の表情に、心がぎゅっと抱きしめられた。急上昇していた興奮も、なだらかなその口角に、自然と落ち着きを取り戻す。
「セブルス……」
思いのすべてを名前に込めた。
おもむろに両手を広げた彼の珍しい行動に首を傾げる。答えの代わりに短く息が吐き出され、クイクイと招くように指先が曲げられた。
「リリー流の仲直りではハグをするのだろう?」
微笑みはいつもの表情に戻っていた。片眉を上げ授業中にも見せる表情で、それでも両手は開かれている。
「いつまで待たせる気だ」
そう急かされ、リリーはセブルスの胸へと飛び込んだ。彼の手が背へ回り、ごく自然な動きでスルリと下がる。腰へ移動したその手を野放しにしていれば、きゅっと指先に力が込められた。
まさか。ウエストを測ろうとしている。
そう気づいた瞬間、リリーは腹部に力を込めた。セブルスの指がおへそをなぞる。
瞬間、息が止まった。
Special Thanks
yu様
(2018.12.9)