溢れる幸せが待っているであろう、君との未来に思いを馳せる


溢れる幸せが待っているであろう、君との未来に思いを馳せる。

君がいてくれさえすれば、私にも人並みの幸せが訪れる。君の存在は、私にさえそう思わせてくれる。


「君はすごいな」

「え、いきなり何の話です?」

「日頃思っていることが口から滑り落ちただけだ」

「よく言う。わざとでしょう?おだててもモリーのパイは私のものですよ」

「結構。私には君の作った料理の方が舌に合う」


夕方、顔を出した時にタイミングよく焼き上がったというお裾分け。それに遠慮なくかぶり付く彼女はいつの間にか背伸びした上品さを繕うことを止めていた。その方がいい。彼女は飾る必要などない。


「もう、今日は一体どうしたんです?何かの記念日でしたっけ?」


リリーが卓上カレンダーを引き寄せ首を捻る。いくら見たところで数字以外が浮かび上がるはずがないというのに、見えないインクで書かれた文字を探すかのごとく角度を変えては眺めていた。


「君は私との未来を想像したことがあるか?」


そう切り出せば、彼女はカレンダーもパイも置いて、その視線すべてを私へ向ける。一心に注がれる瞳を受け止めた。


「もちろんあります。今いるここだって、過去に夢見た未来です。とっても幸せな」

「そうか……ここも未来か」


『幸せ』


彼女から飛び出した言葉が私へ染み込む。


「セブルスはよく笑うようになりましたね」


彼女の示す指を追って、ガラス戸棚に自分を映す。そこには気の抜けた見慣れない表情の自分がいた。


「君に釣られるせいだ」

「あなたが私を幸せにするからですよ」


誰に聞かれても呆れられるに違いない応酬。更に気が抜けてしまった。それは彼女も同じだったようで、自然と目が合いまた笑みを溢す。


「ワインでも開けましょうか!普段通りの幸せな今日のお祝いに」


パンッと手を打って、彼女が落ち着きなく席を立つ。瓶やグラスを取り出す後ろ姿を眺めながら、溢れる幸せに浸る君との今へ思いを馳せた。

やっぱりどうしようもなく君が好きで幸せだ。

Special Thanks
you
(2018.12.7)


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