ある日の受難


ある日の受難。

ひとつめ、朝食の席で後ろを通ったスネイプ先生に気付かず立ち上がってしまった。私がローブを踏んだせいで先生が前につんのめる姿を全校生に晒してしまった。知らないグリフィンドール生に感謝されても何も嬉しくない。

ふたつめ、魔法薬学でスネイプ先生に当てられた。手も挙げてもいないのに。他の質問は全部分かっていたけど、よりにもよって分からない質問だった。朝の仕返しに違いない。最悪。

みっつめ、レポートにスネイプ先生の似顔絵をハートで囲んだ落書きを描いて、消さずにそのまま提出してしまった。すぐに気付いて取り返そうとしたけれど、意地悪な先生が返してくれるわけがない。ひょいとかわされ、先生の胸板で強かに鼻を打った。

最悪だったあの日は、まだ尾を引いている。


「ねぇリリー、スネイプがこっち見てるんだけど!もしかして私、何かしちゃった?授業で多めにサラマンダーの血液を取ったのバレちゃったのかな……」


そわそわと落ち着きのない友人へ乾いた笑いを送り、無意味に本を抱え直す。


「大丈夫じゃないかな……。私に大きな心当たりがあるし」

「えっ、何したの?」

「それは聞かないで。笑い話にするにはまだ時間が必要なことなの」


同情する友人の慰めを肩に受け、こっちを見ているらしいスネイプ先生のいる方角を見た。目が合うかと思ったが、先生はちょうど逸らしたところだったらしい。私は回していた首を戻して大きなため息をついた。


「まだ見てる!」

「誰が?」

「スネイプに決まってるでしょ!本当に何をしたの?」


そう言われ、また顔を向ける。しかし私には他のグリフィンドール生を睨む先生しか映らない。しばらくそのまま見つめていても、とうとう先生がこちらを向くことはなかった。

それでも明日は魔法薬学の授業がある。いつも通りなら、提出したレポートが返却されるはず。何事もなく済めば良いのにと願いながらも、何事もなく済むはずはないと確信めいたものを感じていた。

ああ、どうしよう。最悪のパターンを何通りも考えておかなければ。私がしてしまったように、私も晒し者にされるのだろうか。

明日が来るのが恐ろしい。

Special Thanks
you
(2018.12.6)


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