好きすぎて苦しい。
またこんな気持ちになる日が来ようとは。私はこの心をただ一人に捧げるものだと思っていた。しかしもうリリーといたよりも長くリリーと共に過ごしている。年月が全てではないが、年月は多くを変えるということを、ふとした瞬間に実感する。
隣で寝息を立てるリリー。その唇へ触れて風を感じた。生きている証を。ゆっくりとなぞり反応がないことを確認し、額にかかる彼女の髪を払う。起きていても寝ていても緩みきっているこの顔に何度救われたことか。
今度は指先を肩へ乗せ、肘を通り手のひらへと辿り着く。魔法薬に熱心なあまり私のように荒れ気味となってしまった手。今度何かケアするものを考えておかなければ。
親指の付け根の柔らかさを指先に感じる。何度かつついて、彼女の人差し指へ自分の人差し指を絡めてみた。相変わらずリリーは穏やかなまま。ゆっくりと指を増やし、彼女のと交互になるように絡め合う。手のひらを擦り合わせてホッと息をついた。
「現行犯を捕まえました」
「――っ!」
繋いだ手にきゅっと力が込められた。
「起きていたのか?」
「隣がモゾモゾとしているものですから。それにしても、寝込みの襲い方としては少々可愛すぎやしませんか?」
彼女が手を引き上げれば、自ずと私の腕も上がる。お互いの顔の間へ置いたそれを小刻みに揺らし、彼女はクスクスと笑っていた。
「……さっさと寝直せ。明日に響いても私に非はない」
身体ごと彼女から逸らし、目を閉じた。繋がれたままの手が彼女へと引き寄せられる。甲に彼女の頬を感じた。それに応えるように、私も指先に心を込める。
愛してる。
Special Thanks
SS様
(2018.12.3)