あなたの香りの中の私


あなたの香りの中の私。

プライベートな空間と言えど、職場とも言える場所での背徳感。地下の石壁に囲まれた、薄暗いあなたのテリトリー。その中でも一際強いあなたを求め、ベッドシーツへ顔を埋める。


「おやすみ、リリー」

「……セブルスの意地悪」


他でもないあなたを待っていたことを知ってるくせに。クリスマスディナーを楽しんでワインも呑んだあとの仕事なんて、ろくな出来にならない、と手を引く私を振りほどいたくせに。


「家で待つ家族を放ってホグワーツへ残ったクリスマスは随分と楽しめたようだな」


セブルスが私の頬を指先で掻いた。摘ままれた紙吹雪の名残りをハラハラと床へ捨て、彼の膝がベッドへと乗り上げる。


「家族はここにもいるから」


私は両手を広げ、彼へ微笑んだ。けれど胸に飛び込んでくれる甘い恋人はここにはいない。


「『家族』の定義を一度君と確認し合う必要がありそうだ」

「あなたの定義に嵌まるように私を変えるのもアリかもね」

「……いつまでも話していたいなら厨房にでも行くといい」


私は上唇をしっかりと下唇へつけてセブルスへと見せつける。


「いい子だ」


クツクツと喉の奥で笑う彼の声にベッドの軋みが重なって、背をゾクリと期待が走る。唇を押し潰す彼の親指が、抉じ開けるように歯へと到達した。

背があなたの香りの中へと沈み、そして

とけだす。

Special Thanks
you
(2019.12.25)


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