元々違和感を感じていた。
余り物同士宛がわれただけの歪な恋人。結婚や子供とまでは急かされなくて良かったと思うべきだろう。行く行くはそれも望まれているのかもしれないが。――いや、彼は純血ではなかったはずだ。ならば相互に監視させ合うことが目的だろうか。
昼間だというのに誰も出歩いていない草臥れた町を歩けば余計なことばかりを考える。マグルの掃き溜めそのものの路地を抜けて辿り着いたのは、少し前から顔を出し始めた他人の家。断りもなく開けることにもう抵抗はない。外と同じ静寂の支配する室内は慣れたもの。
しかし今日は少し違っていた。
「いたの、セブルス」
「この家の所有者は我輩だ」
「そうね。あなたにはお似合いの場所だわ」
脱いだマントを玄関扉のそばへ掛け、不機嫌顔でティーカップを傾ける男の向かいへ座る。ローブのポケットへ手を突っ込めば、引き出てくるのは質量を無視したサイズの紙袋。更にその中から小ぶりのリンゴを取り出して、彼へと差し出した。しかし首は横に振られ、私はその手のままリンゴへとかぶり付く。
「ランチがまだなの。それより、ホグワーツでダンブルドアを見張るんじゃなかった?」
「夏期休暇中だ。彼がホグワーツを空ける日も増えている」
「行き先は?」
「さぁな」
「それはそれは喜ばしい情報だこと」
彼の屈辱に歪む表情は気分がいい。二口、三口、とリンゴを咀嚼しながら彼の様子を探った。彼はベタついた黒髪を珍しく耳へ掛け、飲み干したティーカップの底に溶け残った憤りを見つけてはまた顔をしかめる。
「それ、何を淹れたの?」
「ダージリン」
「まだ残ってる?」
「もう冷めた」
「私は気にしないから平気」
杖を振り新しいティーカップを用意すれば、ポットは意気揚々と澄んだ液体を注ぎ込む。ゴクリと一口飲んだところで左腕が焼けるように痛んだ。
「召集ね」
「そのようだな」
彼はすぐさま姿を消した。しかし私は違和感を追って、彼の残したカップの縁をなぞる。心に引っ掛かるその正体を見つけたところでつらいだけなのに。
彼の淹れたその香り、飲み込んだ私の一口、
ダージリンの匂いが私を包んで離さない。
Special Thanks
you
(2018.11.28)