むかしむかし、ホグワーツにセブルス・スネイプという一見陰鬱気な少年が在籍していました


むかしむかし、ホグワーツにセブルス・スネイプという一見陰鬱気な少年が在籍していました。

彼は才能に溢れ、取り分け魔法薬と闇の魔術に熱中しました。来る日も来る日も高い鉤鼻を分厚い本へと近付けにらめっこ。

そんなある日、少年は一人の少女と知り合いました。

少女は魔法薬が大の苦手で、授業でも失敗ばかり。教室で大鍋を爆発させてはみんなに呆れられていました。

見かねた少年が少女に言います。

『落ち着いて、一つ一つの手順を確実にこなしていけば、少なくとも大鍋が爆発することはない』

『ありがとう、スネイプくん』

『材料が無駄になるのが嫌なだけだ。あと大鍋が爆発して授業が中断されるのも』

『それでもありがとう、スネイプくん』


その日から少年は魔法薬の授業に限って少女の後ろの席に座るようになりました。


『そろそろ次の手順を再確認しておけ』

『深呼吸してから小刀を持て』

『教科書を鵜呑みにしない方がいい』


少しずつ、少しずつ、少女は魔法薬の調合に自信が持てるようになっていきました。それに反して少年は、少しずつ、少しずつ、闇の魔術への傾倒を強めていきました。

卒業を機に、二人は別の道を歩むことになりました。


一度は分かれた二人の道が再び交わったのは、運命の悪戯と表現するしかありません。大人になった二人はそれぞれの人生を抱え、再びホグワーツにて再会することになりました――


「――私は嬉しかったよ。スネイプくんは相変わらず陰鬱気で、皮肉には磨きがかかってたけど」


目を閉じるかつての少年の髪を掬い、頬を擽り、頭を撫でて、かつての少女が優しく語りかけていた。リリーの膝へ頭を乗せて、スネイプはどこか心地の好さそうな、安らかな表情で横たわる。


「世間も、騎士団も、私までもを欺いて。全部やりきっちゃったなんて、かっこいいなぁ、もう」


二人のいる古びた館にバタバタと複数人の足音とざわめきが届いた。もう誰かが駆けつけたのか、とリリーが扉を睨み付ける。そして二人きりの時間が僅かでも延びるようにと杖を振った。


「あなたにとってこれはハッピーエンドなの、スネイプくん?」


リリーは一層彼を引き寄せて、覆い被さるように抱きしめる。全身で彼の存在を確かめると身体を起こした。しがらみから解き放たれた彼の表情を眺め、眠りに落ちた子供へするように彼の額へとキスを落とす。


「次は私もエンディングに参加させてね。誰から見てもハッピーエンドにしてあげる。約束よ、スネイプくん。その時は、そうね……こうして締めくくるの。

こうして、ホグワーツで将来の伴侶と出会ったセブルス・スネイプ少年は闇に堕ちることなく、幸せに暮らしましたとさ」

Special Thanks
月猫様
(2019.7.17)


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