騙されてなるものか。
リリーが休暇にふくろうを寄越したかと思えば、
『皆で海へ行こう!』
だなんて。そもそも『皆』とは誰を指すんだ。どうせ差出人と同じグリフィンドールの連中だろう。ポッターとか、ブラックとか、面倒なやつばかり。
もしかしたら、リリーも誘われているだろうか。
『休暇にずっと家なんて窮屈だよ』
窮屈なんてものじゃない。窒息しそうだ。前にうっかり愚痴てしまったのをリリーは覚えていたに違いない。連れ出すなんて余計なお世話。
けれど家以外にも行く宛があるのは心地好い。
『セブルスが来てくれると嬉しいな』
何故嬉しくなるのか、さっぱり分からない。これは所謂お世辞のようなものだろう。それでもこれをリリーが書いたのだと思うと、不思議と悪い気はしなかった。
『今度の水曜日なんてどう?良い返事を待ってる!』
もうあまり日にちがない。返事に悩んで手紙を届ける前に当日が来てしまう。こんなに急な誘いは相手を困らせると分からないのか。僕が水着なんて持っていないことも、リリーなら想像できるだろうに。
これはリリーの名を語った別の誰かの悪戯かもしれない。当日、ノコノコと海へ行けば無人だったり、何か罠が仕掛けてあったり。暇なグリフィンドールならあり得る仕掛けだ。
だが無視するだけというのも面白くない。
『君が迎えに来るのなら』
返事には一言、そう書いた。
危うく騙されるところだった。リリーの名まで借りてこんなこと。どうせ
好意的な風を装って、皆で僕を笑い者にする算段だろう。
Special Thanks
you
(2019.7.17)