僕は彼女のどこが好きなのか?
それはもちろん、友人としての話。第一に、リリーは僕を嫌っていない。だから嫌がらせをしてこない。第二に、彼女はスリザリンだ。だから僕と気が合う。第三に、彼女は僕にとやかく言わない。友達の選び方とか、外見のこととか。
彼女ほど一緒にいて気が楽な人物はいない。のろまなシーカーのようにスニッチを飛び回らせ気を削がれることはないし、満月の夜も共にレポートに励むことができる。
リリーと話さなくなってから、そんなリリーと過ごす時間が増えたのは、当然とも言える。
「おはよう、セブルス!」
リリーの朝は、僕で始まる。談話室で目を輝かせる彼女と挨拶を交わし、僕の朝もようやく始まる。
「おはよう。今日も元気だな」
「うん!セブルスにおはようって言えたから、今日も元気!」
「どういう理屈なんだ、それは」
「これは理屈じゃないよ」
「なら呪いか?」
「元気になるのに?」
「僕に会う必要があるならな」
「夏休みなんてなければ良いのに」
「僕もそう思う」
同意を示した途端、彼女の表情はいっそう華やいだ。何故僕を、とは思えど、彼女の心に気付かないほど鈍くはない。
これは青臭い早春の呪い。
「もう朝食にする?ふくろう便も来る頃だし」
「その前に羽織るものを取ってくる」
僕が離れれば、リリーはすぐそばの一人掛ソファへと座った。そばにはクラスメイトやルームメイトも残って談笑しているというのに、彼女は表情を消し去ってまるで興味がない。それよりも暖炉の方が彼女にとっては観察しがいがあるようだった。
彼女が僕の視線に気付いて手を振った。男子寮への階段に足をかけただけの僕に首を傾げながらも、彼女はまた笑顔に戻る。
結局、僕は彼女のどこが好きなのか。
それはリリーが僕にしか微笑みかけないところ。僕が無愛想に振る舞っても、気紛れに笑っても、彼女は変わらず笑みを向ける。その困った笑い方も、腹を抱えて笑う様も、目を伏せはにかむ姿も、何もかもを、
僕だけが知っている。
Special Thanks
you
(2019.7.16)