学生指導
はスネイプにとって煩わしい仕事のひとつであった。指導をしても表面だけの反省で、生徒たちは好き勝手やりたい放題にやっている。消灯後の密会はその最たるもので、休暇前やバレンタイン後ともなればその数は自然と増える。
果たして見回りにどれだけの意味があるというのか。
「またため息ですか。幸せが逃げますよ、スネイプ教授」
「溜め込めば良いことがあるとでも?」
消灯後の見回りは大階段へ差し掛かっていた。絵画に遠慮してリリーがクスクスと控えめに笑う。隣で口元へ手を添える彼女を一瞥し、スネイプは少し離れた壁にある小人サイズの扉へ向かった。
「フォーセット!ステビンズ!ハッフルパフとレイブンクローから共に10点減点だ!」
中から飛び出してきた生徒二人があっという間に走り去る。リリーは「お見事」と彼の地獄耳に拍手した。
「残るは校庭の見回りですね」
「一番厄介だ」
スネイプはまたため息をつきそうになって、手の甲同士の触れ合う感触に息を呑みこむ。ふと彼女を見れば、柔らかな笑みがランタンに照らし出されていた。
触れ合った甲を離さぬまま、中指だけを擦り合わせる。どちらともなく絡め合い、指1本だけで繋がった。元より重なっていた影が固く結び付く。その少ない接触面からは想像もできない膨大な思いが、二人の間を行き来していた。
「逃げられては困るのでな」
「そうですね。あなたはすぐに生徒の元へ行ってしまう」
二人の進行方向、遠く湖の畔では、寄り添う小さな影が息を潜めていた。リリーがキュッと中指に力を込める。
「どうしますか?」
「……運のいいやつらだ」
寝静まった夜の学校。強く輝く星空に誘われるのは生徒だけとは限らない。こうして二人で寄り添い歩くため、出歩く者を追い返す。今日の仕事を切り上げても、明日もまた、煩わしくも
指導は尽きない。
Special Thanks
you
(2019.7.4)